ひょっとこ

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ひょっとこの面
ひょっとこの例(佐原の大祭秋祭り)

ひょっとこは、口をすぼめて曲げたような表情の男性、あるいはそののこと。潮吹き面(しおふきめん)ともいう。左右の目の大きさが違うこともあり、頬被りをしている場合もある。あるいは面を付けた人は頬被りをすることが多い。女性の「おかめ」「おたふく」と対に扱われることもある。

ひょっとこは田楽などでの道化役としてしばしば登場する。面をつけ滑稽な踊りをすることは現代の各地の祭りでも見ることができるが、その中で最も有名な祭りとして宮崎県日向市日向ひょっとこ夏祭りがある。祭り自体は昭和59年に始まった新しいものではあるが、毎年数万の観客を集め、2000人近い踊り手が市内を練り歩く、同市最大かつ宮崎県を代表するお祭りである。この祭りで踊られる「橘ひょっとこ踊り」は明治期に日向市塩見永田地区で開業眼科医をしていた橘公行医師が里神楽を元に考案したとされ、現在は地元の橘ひょっとこ踊り保存会によって引き継がれている。

ひょっとこの語源は竈(かまど)の火を竹筒で吹く「火男」がなまったという説や口が徳利のようであることから「非徳利」からとの説もある。 また岩手県奥州市の江刺地方に残る民話に「ひょっとこのはじまり」というのがあり、その中ではヘソから金を生む奇妙な顔の子供であり、死んでから自分に似せた面を竈の前に架けておけば家が富み栄えると夢枕に立ったという話である。その子の名前がヒョウトクスであったところから、ひょっとこになったという。類似の話は各種あるようであるが、概ね東北地方では火の神様として扱われる。日本の代表的民謡「出雲安来節」にもひょっとこ顔の男踊りとして、「ドジョウ掬い踊り」があるが、これも五円玉を鼻につけるところが、先の岩手県の民話と起源の同一性が感じられる。出雲の国はかつて製鉄が盛んであり、その砂鉄採取が所作の源流とされ、炎と関係の深い金属精錬神への奉納踊りの側面もあったと考えられる。


文学作品及び伝統芸能に登場するひょっとこ

ひょっとこの登場する作品を列挙することは枚挙に暇がないが、時代や各文芸におけるひょっとこの変遷を考える上で役立ちそうなものとして紹介する。

  • 芥川龍之介が「ひょっとこ」という題名の小説を書いている。
  • 太宰治の著作「おしゃれ童子」中、演劇中の鳶職が「ひょっとこめ!」と台詞を吐くことに憧れ紺の股引が欲しかったという記載がある。
  • 古典落語 「厩火事」中に「ひょっとこめ!」と相手を揶揄する台詞がある。


空調用ダクトのひょっとこ

冷暖房に使用するダクトの部材において、主管から分岐する場合に抵抗を減らすために風の流れる方向に広がった台形状の取り出し管のことを「ひょっとこ」と呼称する。

吹き出し口に取り出す場合に、天井開口から作業できるように、内側から折り倒せるように加工した取り出し管を「内ひょっとこ」と呼称する。

ともに取り出し部分にあたる鉄板がひょっとこの面の口のように飛び出していることからの呼称である。

関連項目