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「無形文化遺産」の版間の差分

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→‎登録されている無形文化遺産の一覧: いくつか和訳しました。準拠すべき公式の和名が見つからなかったので独自訳です。
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!width="47%"|名称<ref>掲載年が2005年までの物件については、日本語訳は、[http://www.accu.or.jp/masterpiece/index.htm ユネスコ・アジア文化センターの資料]をもとに記載している。</ref>
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|Peking opera
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|中国伝統医学の[[鍼灸]]術
|Acupuncture and moxibustion of traditional Chinese medicine
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|中国の[[影絵劇]]
|Chinese shadow puppetry
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2012年8月11日 (土) 12:16時点における版

無形文化遺産(むけいぶんかいさん、Intangible Cultural Heritage)は、民族文化財、フォークロア、口承伝統などの無形の文化遺産のこと。

定義

2003年の第32回ユネスコ総会で採択された「無形文化遺産の保護に関する条約」の第2条では、「無形文化遺産とは、慣習、描写、表現、知識及び技術並びにそれらに関連する器具、物品、加工品及び文化的空間であって、社会、集団及び場合によっては個人が自己の文化遺産の一部として認めるものをいう」と定義している。

同条約においては、無形文化遺産の重要性についての意識を向上させるために、ユネスコ内に設置された無形文化遺産保護に関する政府間委員会によって、人類の無形文化遺産の代表的な一覧表Representative List of the Intangible Cultural Heritage of Humanity)を作成することとされている(第16条)。また、条約採択前に人類の口承及び無形遺産の傑作Masterpieces of the Oral and Intangible Heritage of Humanity)として宣言されたものは、一覧表に記載されることになっている(第31条)。

表記

一般に、この一覧表に掲載される無形文化遺産を、世界無形遺産世界無形文化遺産といった世界と付く俗称で呼ぶこともあるが、我が国での条約承認手続きにおける表記は無形文化遺産であり[1]、条約本文においてもworldは冠せられず[2]誤りである。

経緯

無形文化遺産は、芸能(民族音楽ダンスなど)、伝承、社会的慣習、儀式、祭礼、伝統工芸技術、文化空間などが対象である。有形の文化遺産については既に1972年に採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)により、世界遺産をリストアップするなどの保護の枠組みが整えられていたが、無形文化遺産についてはその枠組みで保護することが難しいため、新たな枠組みが作られた。無形文化遺産の保護に関する条約は、締約国が30か国に達した時点から3か月後に発効する規定となっており、採択されてから約3年後の2006年4月20日に発効した。

ユネスコでは、無形文化遺産の保護に関する条約の発効に先立ち、隔年で「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」(傑作宣言)として発表していた。隔年で3回行われ(2001年2003年2005年)、計90件が傑作宣言された。これらは無形文化遺産の保護に関する条約の発効後に代表一覧表に統合され、その後の宣言は行われない。

2007年9月には、代表一覧表や「緊急に保護する必要のある無形文化遺産の一覧表(危機一覧表)」などの作成について協議する、ユネスコの第2回政府間委員会が日本で開催された。この委員会では、第1回の一覧表作成を、2009年9月に行うことで各国政府代表が合意した。2008年6月に開催されたユネスコ総会で正式に決定された[3]。なお、代表一覧表への各締約国の提案提出期限については、第1回は2008年9月末となっている。ちなみに、危機一覧表は2009年3月15日である。第2回目以降は、代表一覧表への提出期限は毎年8月末とされている。

代表一覧表

2008年6月に開催された締約国総会で採択された運用指示書に、代表一覧表に記載される基準やタイムテーブルが示されている。それによれば、2009年9月に開催予定の政府間委員会で第1回の代表一覧表が作成され、その後毎年更新されていく予定である。代表一覧表は、各締約国から提出される個別提案案件を、政府間委員会に設けられる補助機関が審査し、その後、政府間委員会が最終的に評価・決定することによって作成され、世界遺産の評価体制とは異なる。

条約第16条、17条に基づいて作成される無形文化遺産の国際的保護を行うために作成される一覧表は、関係締約国からの提案または要請に基づき、締約国から選出される政府間委員会が作成する。一覧表は、

  • 「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」(代表一覧表)
  • 「緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表」(危機一覧表)

の2種類がある。

分野

無形文化遺産の保護に関する条約第2条第2項では、下記の五つの分野 (Domain) を挙げている。

  • 口承による伝統及び表現(無形文化遺産の伝達手段としての言語を含む)
  • 芸能
  • 社会的慣習、儀式及び祭礼行事
  • 自然及び万物に関する知識及び慣習
  • 伝統工芸技術

この分野は、各国がユネスコに推薦する際の推薦書のフォーム上に記載することとなっている。2009年代表一覧表の掲載案件について、日本からの推薦は1件につき該当分野を1つにしているが、複数分野に該当するものとして推薦・登録される例も多く存在する。代表一覧表に記載されたものの中には、該当分野が記載されていないものもある。

人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言

人類の口承及び無形遺産の傑作の分布

無形文化遺産の保護に関する条約の発効以前は、法的に無形文化遺産として登録できないので、ユネスコとして、たぐいない価値を有する世界各地の口承伝統や無形遺産を讃えるとともに、政府NGO地方公共団体に対して口承及び無形遺産の継承と発展を図ることを奨励し、独自の文化的特性を保持することを目的として、基準を満たすものを、「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」(傑作宣言)として公表した。第1回の宣言は2001年5月18日に、第2回の宣言は2003年11月7日に、第3回の宣言は2005年11月25日に行なわれ、それぞれ19件、28件、43件が傑作宣言されている。2006年無形文化遺産の保護に関する条約が発効し、これらのものについては2009年に代表一覧表に正式登録され、統合された。

傑作宣言では、「選考基準」のいずれかの条件を満たすものについて、「考慮基準」を考慮のうえ選考された。

選考基準
  1. たぐいない価値を有する無形文化遺産が集約されていること
  2. 歴史芸術民族学社会学人類学言語学又は文学の観点から、たぐいない価値を有する民衆の伝統的な文化の表現形式であること
考慮基準
  1. 人類の創造的才能の傑作としての卓越した価値
  2. 共同体の伝統的・歴史的ツール
  3. 民族・共同体を体現する役割
  4. 技巧の卓越性
  5. 生活文化の伝統の独特の証明としての価値
  6. 消滅の危険性


登録されている無形文化遺産の一覧

2006年に無形文化遺産の保護に関する条約が発効した。これにより、条約発効前にユネスコにより実施していた「人類の口承及び無形遺産に関する傑作の宣言」に登録されていたものは、2008年11月に本条約の代表一覧表に統合された[4]

アフリカ

提案・申請国 掲載年 名称[5] 分野
2005 グゥララ地域のアヘリル
2005 ウガンダバーククロスの製作
2003 叙事詩アル・シラー・アル・ヒラリヤ 口承による伝統・表現

2005 カンクラングマンディンゴ族の成年の儀式)
2001 ニアガッソラソソバラの文化的空間 芸能
伝統工芸技術
2001 アファウンカハグボフェダグバナ社会の横吹きラッパの音楽」 芸能
2005 マキシ仮装


2005 グレワムクル
2005 ムベンデジェルサレマの踊り 社会的慣習、儀式及び祭礼行事
伝統工芸技術
2003 中央アフリカアカ・ピグミー族の口承伝統 口承による伝統・表現
芸能


2001 ゲレデの口承遺産 口承による伝統・表現
社会的慣習、儀式及び祭礼行事
2005 ナイジェリアにおけるイファ占い制度 社会的慣習、儀式及び祭礼行事
伝統工芸技術

2011 Cultural practices and expressions linked to the balafon of the Senufo communities of Mali and Burkina Faso
2003 ザフィマニリの木彫知識 自然・万物に関する知識・慣習
2005 治療のための踊り、ヴィンブザ
2005 ヤーラルデガルの文化的空間
2005 チョピ族ティンビラ
2001 ジャマ・エル・フナ広場の文化的空間 伝統工芸技術
2005 タンタンムッセム

アジア・太平洋諸国

提案・申請国 掲載年 名称 分野
2001 クッティヤタムサンスクリット劇 芸能
2003 ヴェーダ詠唱の伝統 口承による伝統・表現
社会的慣習、儀式及び祭礼行事
2005 ラーマーヤナの伝統演劇
2003 ワヤン人形劇 芸能
2005 インドネシアクリス 工芸
2001 ボイスン地域の文化的空間 伝統工芸技術
2001 宗廟先祖のための儀礼および祭礼音楽 社会的慣習、儀式及び祭礼行事
2003 パンソリの詠唱 芸能
2005 江陵端午祭 社会的慣習、儀式及び祭礼行事
伝統工芸技術
2009 カンガンスルレ
2009 男寺党ノリ
2009 霊山斎
2009 済州チルモリ堂燃燈グッ
2009 処容舞
2010 歌曲
2010 大木匠
2003 カンボジアの宮廷舞踊 芸能
2005 クメール影絵劇
2003 キルギス叙事詩の語り部、アキンズの技芸 口承による伝統・表現

2003 シャシュマカーム 芸能
2001 昆劇 芸能
2003 古琴」(七弦琴)演奏技 芸能
2005 新疆ウイグル自治区ウイグル族の大曲(ムカム)芸術
2009 中国の印象彫刻技術
2009 中国の活版印刷技術
2009 中国の書道
2009 中国の切り紙
2009 木造建築の中国伝統建築の職人技術
2009 南京雲錦の職人技術
2009 ドラゴンボート祭り
2009 中国朝鮮族の農民の舞踊
2009 ケサルの叙事詩の伝統
2009 トン族の大歌
2009 花児
2009 マナス
2009 媽祖信仰と習慣
2009 モンゴル族の歌唱技能:ホーミー
2009 南音(福建省の伝統器楽)
2009 熱貢芸術(チベット仏教芸術)
2009 中国の養蚕・絹織物の職人芸術
2009 チベット地方の劇
2009 龍泉青磁の伝統技術
2009 宣紙の手すき製造技術
2009 西安鼓楽
2009 粤劇(広東オペラ)
2010 京劇
2010 中国伝統医学の鍼灸
2011 中国の影絵劇
2003 ラカラカの舞踏と歌唱 芸能
2001 能楽 芸能
2003 人形浄瑠璃文楽 芸能
2005 歌舞伎
2009 雅楽
2009 小千谷縮
2009 越後上布
2009 石州半紙
2009 日立風流物
2009 京都祇園祭山鉾行事
2009 甑島トシドン
2009 奥能登あえのこと
2009 早池峰神楽
2009 秋保の田植踊
2009 チャッキラコ
2009 大日堂舞楽
2009 題目立
2009 アイヌ古式舞踊
2010 組踊
2010 結城紬
2011 佐陀神能
2011 壬生の花田植
2003 バヌアツの砂絵 自然・万物に関する知識・慣習
2005 バウルの歌
2001 イフガオ族の歌、ハドハド 口承による伝統・表現
2005 ラナオ湖マラナオ民族ダランゲン叙事詩
2005 ドゥラミツェの太鼓と仮面舞踏 社会的慣習、儀式及び祭礼行事
伝統工芸技術
2003 ベトナムの宮廷音楽、ニャ・ニャック 芸能
2005 ベトナム中央高原におけるゴングの文化的空間
2003 モリンホール馬頭琴)の伝統音楽 芸能

2005 オルティンドー―モンゴル人の伝統的な「長い歌」
2005 マヨンの舞踊劇

ヨーロッパ・アラブ諸国

提案・申請国 掲載年 名称 分野
2003 アゼルバイジャンムガーム音楽 芸能
2009 アゼルバイジャンのアシクの技術
2010 アゼルバイジャン共和国のアゼルバイジャン絨毯の伝統技術






2009 ノヴルズノウルーズノールズナウルズナウロズネヴルズ(ゾロアスター教の新年祭)










2010 生きた人類の遺産、鷹狩り
2005 アルバニア民衆の同音多声音楽(アイソポリフォニー) 芸能
2005 ドゥドゥーク音楽
2010 Armenian cross-stones art. Symbolism and craftsmanship of Khachkars
2003 サヌアの歌 芸能
2001 シシリアの人形劇 芸能
2005 テノール風の歌の口承伝承:サルデーニャ牧羊文化の無形遺産としての表現



2010 地中海の食事
2003 イラクマカーム : 伝統音楽 芸能
2003 キーヌ島の文化的空間 伝統工芸技術


2003 バルト地方の歌謡・舞踏フェスティバル 社会的慣習、儀式及び祭礼行事
2001 グルジア多声音楽の歌謡 芸能
2001 エルチェの神秘劇 社会的慣習、儀式及び祭礼行事
2005 ベルガの民衆祭り「パトゥム
2009 スペイン地中海岸の灌漑法廷:ムルシア平原の賢人裁定、バレンシア平原の水法廷
2009 ラ・ゴメラ島(カナリア諸島)の口笛言語、シルボ・ゴメロ
2010 マジョルカのシビルの歌唱
2010 フラメンコ
2010 人間の塔
2005 フヤラ:楽器とその音楽
2005 スロバキア地方のウェルブンク(新兵の踊り) 芸能
伝統工芸技術
2003 大衆講談師 メッダの技芸 口承による伝統・表現
2005 メウレウィー教団セマの儀式
2005 パレスティナヒカイェ
2005 ショプロウク地域の古来のポリフォニー・舞踏・儀式
2009 Nestinarstvo, messages from the past: the Panagyr of Saints Constantine and Helena in the village of Bulgari
2009 コルシカ島パディエッラ風の歌謡

2005 ベルギーフランス巨人とドラゴンの行列
2003 バンシュカーニバル 社会的慣習、儀式及び祭礼行事
2009 Procession of the Holy Blood in Bruges
2010 Krakelingen and Tonnekensbrand, end-of-winter bread and fire feast at Geraardsbergen
2010 Houtem Jaarmarkt, annual winter fair and livestock market at Sint-Lievens-Houtem
2010 Aalst carnival
2011 Leuven age set ritual repertoire
2005 ペトラワディラムベドゥの文化的空間

2001 リトアニアの十字架の手工芸とその象徴 自然・万物に関する知識・慣習
2005 チャルシュの伝統
2001 セメイスキの文化的空間と口承文化 伝統工芸技術
2005 ヤクートの英雄叙事詩「オロンホ 口承による伝統・表現

北中南米・カリブ諸国

提案・申請国 掲載年 名称 分野

2009 タンゴ

2001 ザパラの人びとの口承遺産と文化的表現 自然・万物に関する知識・慣習
口承による伝統・表現
2003 ムーアタウンの逃亡奴隷 マルーンの遺産 伝統工芸技術
2003 トゥンバ・フランセーサ 芸能
2005 ラビナル・アチのバレエ(戯曲、劇、舞踊、舞踊劇) 口承による伝統・表現
2005 コスタリカの牛飼いと牛車の伝統
2003 バランキーヤカーニバル 社会的慣習、儀式及び祭礼行事
2005 パレンケ・デ・サン・バシリオの文化的空間
2001 ヴィラ・メラのコンゴ族の聖霊の集団の文化的空間 伝統工芸技術
2005 ココロの舞踊劇の伝統
2005 エル・グエグエンセ
2003 ワジャピ族の口承及び絵画による表現 自然・万物に関する知識・慣習
口承による伝統・表現
2005 バイアレコンカボ・デ・バイアサンバ・デ・ローダ 芸能
社会的慣習、儀式及び祭礼行事


2001 ガリフナの言語、舞踏および音楽 口承による伝統・表現
2005 タキーレとその織物技術 自然・万物に関する知識・慣習
2001 オルロカーニバル 社会的慣習、儀式及び祭礼行事
2003 カラワヤ族アンデス的宇宙観 自然・万物に関する知識・慣習
2003 死者に捧げる原住民の祭礼 社会的慣習、儀式及び祭礼行事

脚注

関連項目

参考文献

  シンクタンクせとうち総合研究機構

外部リンク