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'''ギリシ語'''は、[[インド・ヨーロッパ語族]]に属する[[言語]]。[[ギリシャ|ギリシア共和国]]、[[キプロス|キプロス共和国]]また[[イスタンブール]]のギリシア人居住区などで使用されているほか[[学術用語]]として[[ラテン語]]と並び使用されている。ギリシアとキプロスでは[[公用語]]になっている。[[ISO 639]]による言語コードは、2字が'''el''', 3字が'''ell'''で表される。
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古くは古代ギリシアの諸[[ポリス]]で用いられた他、[[ヘレニズム時代]]の[[セレウコス朝|セレウコス朝シリア王国]]、[[プトレマイオス朝|プトレマイオス朝エジプト王国]]、7世紀以降の[[東ローマ帝国]](ビザンツ帝国)などで公用語として用いられた。
古くは古代ギリシアの諸[[ポリス]]で用いられた他、[[ヘレニズム時代]]の[[セレウコス朝|セレウコス朝シリア王国]]、[[プトレマイオス朝|プトレマイオス朝エジプト王国]]、7世紀以降の[[東ローマ帝国]](ビザンツ帝国)などで公用語として用いられた。
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4世紀以降にローマ帝国の東方を継承した[[東ローマ帝国|東ローマ帝国(ビザンティン帝国)]]では、7世紀以降ラテン語に代わって古典アッティカ方言が文書の公用語として用いられるようになった。また口語としての[[コイネー]]も発展を遂げ、[[ラテン語]]・[[イタリア語]]・[[フランス語]]・[[アラビア語]]・[[トルコ語]]・[[スラヴ語]]などから借用された語彙も用いられるようになった。また、それまで[[大文字]]しかなかった[[ギリシア文字]]に[[小文字]]・気息記号・アクセント記号が一般に普及した(これらは韻律明示のためヘレニズムの文法学者の創造に係るもの)り、単語の区切りにスペースが入れられるようになった(それ以前は連続して書かれていた)のもビザンティン帝国時代である。この中世の[[ビザンティン帝国]]で口語として使われていたギリシア語が現代ギリシア語に継承されている。
4世紀以降にローマ帝国の東方を継承した[[東ローマ帝国|東ローマ帝国(ビザンティン帝国)]]では、7世紀以降ラテン語に代わって古典アッティカ方言が文書の公用語として用いられるようになった。また口語としての[[コイネー]]も発展を遂げ、[[ラテン語]]・[[イタリア語]]・[[フランス語]]・[[アラビア語]]・[[トルコ語]]・[[スラヴ語]]などから借用された語彙も用いられるようになった。また、それまで[[大文字]]しかなかった[[ギリシア文字]]に[[小文字]]・気息記号・アクセント記号が一般に普及した(これらは韻律明示のためヘレニズムの文法学者の創造に係るもの)り、単語の区切りにスペースが入れられるようになった(それ以前は連続して書かれていた)のもビザンティン帝国時代である。この中世の[[ビザンティン帝国]]で口語として使われていたギリシア語が現代ギリシア語に継承されている。


===現代ギリシ語の成立===
===現代ギリシ語の成立===
現代ギリシア語は、ビザンティン帝国の時代から伝わる民間の口語([[デモティキ]])と、公文書や文学・神学書等で用いられてきた古典ギリシア語に近い文語(擬古典語)を元にした「[[カサレヴサ]]」の間を揺れ動きながら成立してきた。
現代ギリシア語は、ビザンティン帝国の時代から伝わる民間の口語([[デモティキ]])と、公文書や文学・神学書等で用いられてきた古典ギリシア語に近い文語(擬古典語)を元にした「[[カサレヴサ]]」の間を揺れ動きながら成立してきた。


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=== 文字・発音・記号 ===
=== 文字・発音・記号 ===
'''[[ギリシ文字]]'''も参照すること。
'''[[ギリシ文字]]'''も参照すること。


*α=/a/(アルファ)
*α=/a/(アルファ)
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
*[[ギリシ文字]]
*[[ギリシ文字]]
Α,α=/a/,Β,β=/v/(閉鎖音から摩擦音に紀元後数百年に変異),Γ,γ(ガンマ)=/有声のth*(英語)/(但し前舌母音の前では/j/),Γ,δ=/摩擦音のg/(閉鎖音から摩擦音に紀元後数百年に変異),Ε,ε=/e/,Ζ,ζ=/z/,Η,η=/i/(後1世紀から),Θ,θ=/無音のth(英語)/=/θ/,Ι,ι=/i/(母音の前で硬口蓋化/j/),Κ,κ=/k/,Λ,λ=/l/,Μ,μ=/m/,Ν,ν=/n/,Ξ,ξ=/ks/,Ο,ο=/o/,Π,π=/p/,Ρ,ρ=/r/,Σ,σ(但し語尾では:ς)=/s/(有声子音の前で/z/),Τ,τ=/t/,Υ,υ=/i/(移行期の/y/を経て後5世紀から10世紀に変異),Φ,φ=/f/(紀元後数百年に変異),Χ,χ=/(ドイツ語のichの)ch/(但し、/a,o、u,/および子音の前では/x/)(紀元後数百年に変異),Ψ,ψ=/ps/,Ω,ω=/o/ (*ΓΓ=ディガンマ(F)は、現在のツアコニア方言では=βで存続するも、前8世紀頃に消滅)
Α,α=/a/,Β,β=/v/(閉鎖音から摩擦音に紀元後数百年に変異),Γ,γ(ガンマ)=/有声のth*(英語)/(但し前舌母音の前では/j/),Γ,δ=/摩擦音のg/(閉鎖音から摩擦音に紀元後数百年に変異),Ε,ε=/e/,Ζ,ζ=/z/,Η,η=/i/(後1世紀から),Θ,θ=/無音のth(英語)/=/θ/,Ι,ι=/i/(母音の前で硬口蓋化/j/),Κ,κ=/k/,Λ,λ=/l/,Μ,μ=/m/,Ν,ν=/n/,Ξ,ξ=/ks/,Ο,ο=/o/,Π,π=/p/,Ρ,ρ=/r/,Σ,σ(但し語尾では:ς)=/s/(有声子音の前で/z/),Τ,τ=/t/,Υ,υ=/i/(移行期の/y/を経て後5世紀から10世紀に変異),Φ,φ=/f/(紀元後数百年に変異),Χ,χ=/(ドイツ語のichの)ch/(但し、/a,o、u,/および子音の前では/x/)(紀元後数百年に変異),Ψ,ψ=/ps/,Ω,ω=/o/ (*ΓΓ=ディガンマ(F)は、現在のツアコニア方言では=βで存続するも、前8世紀頃に消滅)


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== 文献 ==
== 文献 ==
現代ギリシ語の基礎(八木橋正雄著)大学書林(1984年)刊。(カサレヴサとデモティキの比較も載せられ方言にも配慮した唯一の日本語文献)
現代ギリシ語の基礎(八木橋正雄著)大学書林(1984年)刊。(カサレヴサとデモティキの比較も載せられ方言にも配慮した唯一の日本語文献)
HANDBUCH DER NEUGRIECHISCHEN VOLKSSPRACHE/ALBERT THUMB著、初版は1910年,復刻版は1974年(DE GRUYTER刊)。(口語民衆語文法・方言をも記載した記述文法。)(「現代ギリシャ民衆口語ハンドブック」八木橋正雄(私家版)1992年刊の翻訳が存在する。)
HANDBUCH DER NEUGRIECHISCHEN VOLKSSPRACHE/ALBERT THUMB著、初版は1910年,復刻版は1974年(DE GRUYTER刊)。(口語民衆語文法・方言をも記載した記述文法。)(「現代ギリシャ民衆口語ハンドブック」八木橋正雄(私家版)1992年刊の翻訳が存在する。)
日本ギリシア語ギリシア文学会発行雑誌「プロピレア」第4号(1992年刊)第49-55頁,同誌第11号(1999年刊)第40-46頁に、「現代ギリシャ語キプロス方言のアウトライン」(八木橋正雄著)(キプロス方言の記述文法を記述。)
日本ギリシア語ギリシア文学会発行雑誌「プロピレア」第4号(1992年刊)第49-55頁,同誌第11号(1999年刊)第40-46頁に、「現代ギリシャ語キプロス方言のアウトライン」(八木橋正雄著)(キプロス方言の記述文法を記述。)
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2005年4月21日 (木) 11:41時点における版

ギリシア語は、インド・ヨーロッパ語族に属する言語ギリシア共和国キプロス共和国またイスタンブールのギリシア人居住区などで使用されているほか学術用語としてラテン語と並び使用されている。ギリシアとキプロスでは公用語になっている。ISO 639による言語コードは、2字がel, 3字がellで表される。

古くは古代ギリシアの諸ポリスで用いられた他、ヘレニズム時代セレウコス朝シリア王国プトレマイオス朝エジプト王国、7世紀以降の東ローマ帝国(ビザンツ帝国)などで公用語として用いられた。

歴史

古代ギリシア時代

およそ紀元前2000年ごろに、この言語を用いる民族がギリシアに入り、その後ギリシアを中心に発展したためギリシア語と呼ばれる。ギリシアには、何波にもわかれて民族が侵入したため(アカイア人ドリス人など)、そもそもいくつかの方言が存在した。トゥキュディデスの『戦史』(巻三 112)には、アテナイ側が、スパルタ側のドリス方言に近い言葉を話す人たちを使って敵を欺いた話が載っている。

紀元前5から4世紀には、アッティカ方言によりギリシア悲劇プラトンの対話篇など優れた作品が書かれた。このため古代ギリシア語といえば、アッティカ方言を示すようになった。これを古典ギリシア語ということもある。ちなみに、アッティカとは、アテナイを中心とする地方である。こんにち古代ギリシア語を学習する際はアッティカ方言を学習するのが普通である。

ヘレニズム時代から東ローマ帝国時代

古代ギリシア世界が衰退した後、マケドニアによる征服により、共通ギリシア語コイネーが成立。ヘレニズム時代は東地中海の共通言語として用いられた。

続くローマ帝国の時代になると帝国東方ではギリシア語が準公用語(東方地域では皇帝の勅令などもラテン語とギリシア語で出された)となり、文化用語として用いられたが、この時には再び文章語では古典アッティカ方言が復活して、口語のコイネーは俗語として軽んじられた。

4世紀以降にローマ帝国の東方を継承した東ローマ帝国(ビザンティン帝国)では、7世紀以降ラテン語に代わって古典アッティカ方言が文書の公用語として用いられるようになった。また口語としてのコイネーも発展を遂げ、ラテン語イタリア語フランス語アラビア語トルコ語スラヴ語などから借用された語彙も用いられるようになった。また、それまで大文字しかなかったギリシア文字小文字・気息記号・アクセント記号が一般に普及した(これらは韻律明示のためヘレニズムの文法学者の創造に係るもの)り、単語の区切りにスペースが入れられるようになった(それ以前は連続して書かれていた)のもビザンティン帝国時代である。この中世のビザンティン帝国で口語として使われていたギリシア語が現代ギリシア語に継承されている。

現代ギリシア語の成立

現代ギリシア語は、ビザンティン帝国の時代から伝わる民間の口語(デモティキ)と、公文書や文学・神学書等で用いられてきた古典ギリシア語に近い文語(擬古典語)を元にした「カサレヴサ」の間を揺れ動きながら成立してきた。

まず口語では、ソフィアノス(1500−1552)の口語ギリシア語の文法書が文献上で最初。しかし18世紀のヴルガリス(1716−1806)は、擬古典ギリシア語を堅持した。

ミシオダクス(1730-1790)は新しい共通語を基礎にと主張。カタルジス(1720−1807)は口語民衆語を支持した最初の学者。アダマンティス・コライス(1748−1833)が、口語ギリシア語に基づき純化(カサレヴサ化)した新しいギリシア語を作る主張を最初に訴えた。

1821年に始まった独立戦争が1830年ギリシア共和国として一旦成立後、オットーを迎えて、1833年ギリシャ王国が成立。口語にもとづいた民衆語をギリシア語とすべき旨のソロモス(1798−1757)の主張があったものの、オットーとともに故国に帰った官僚は、コイネーに基づく古典的文語を標準とすべき旨を主張した。

その後永くフランスのパリで活躍したプシハリス(1824−1929)が民衆口語が通時言語学的に公用語として適切であり、「カサレヴサ」とよばれる当時行政言語に主流であった「コイネー」に基づく擬古典的な官僚的文語的純正文語(カサレヴサ)は、通時言語学に反した復古的な人口的な擬古復古体で公用語でも文学語においても失当である旨自著「わが旅」等で文学作品の名著の著作による実践をも行い、現代ギリシア語は口語によるべき旨の主張を国際的な学者・作家として初めて言語学的依拠とその著作で立証した。しかし、その「口語」は、ギリシアの革命の舞台となった、ペロポネソス半島アテネの口語を「民衆口語」として、数ある方言のうち「アテネ方言」のみを指称するもので、当時の方言をまとめるには、かつてのコイネーを基盤とする純粋文語(カサレヴサ)の方が、ギリシア全体の共通語として(方言をまとめるために)より一般化しやすい言語であった(西海沖の地域を除く東域の諸島・北ギリシア本土・小アジアの当時の人には土語とカサレヴサしか解する言語はなくアテネ方言は全く通じなかった)。方言学者は、両陣営にも属さず、地域方言をその「口語」として、教育・言語使用に「ディモティキ」ではなく「方言」を使用することを折衷案として主張した。エーゲ海のサモス島やスミルナで女子校の運営にあたったレオンディアス・サッフォー(1832-1890)は、学校教育においても方言を推奨し言語論争に「方言」の重要性を提起した。「カサレヴサ」の長所と、アテネ方言の「ディモティキ」との折衷言語よりも「民衆語である方言」の重要性を強調した。

20世紀の首相ヴェニゼロス(1864−1936)は、新憲法にカサレヴサ(純粋文語)を公用語にすることを記載した。ただし、初等教育については、トリアンダフィリデス(1883−1959)の主宰する「教育学会」が文法書を口語(デモティキ)で出版し、初等教育については民衆口語(アテネ方言化)化が公的に行われた。やがて、メタクサス(1871-1941)の独裁政権の下ではカサレヴサではなくデモティキが正式な国語と制定され、またその後の政変で再度カサレヴサに戻され、その後、1964年ゲオルギオス・パパンドレウ(1888-1968)政府がカサレヴサとデモティキとをともに公用語(併用)とし、軍制下ではカサレヴサが公用語に再度戻され、その後の1974年7月24日の民主制回復で、1976年コンスタンティノス・カラマンリス(1907-1998)政府によりデモティキのみが正式な公用語と定められ今に至る。

しかし、法律等の用語は依然カサレヴサのままで存続し、判例等もカサレヴサで起草・公示されており、司法をはじめ保守的階層の間で用いられているほか、ギリシア正教会の公的典礼用語等もカサレヴサが、正式な権威ある言語として依然と使用され続け、デモティキと並存しているのが現状(2005年)である。

文法

以下現用の言語(langue vivante)の文法を解説する。

名詞には3つのがあり(指小辞の語彙形が発達して意味を失い該中性形が発達した。)、数(単数と複数に統合した)・(Nominativus=主格、Vocativus=呼格、Accusativus=対格、Genetivus=属格、Dativus=与格は文語にのみ残存しGenetivusと前置詞+Gen./Acc.形に統合された)などによって語尾が変化する屈折言語である。

動詞には不定形が廃れ、一人称単数現在継続形が辞書の見出し語となる。また、瞬間的な動作を表すのにアオリスト(瞬時形)という形(コイネーの語彙形態素を継承している通時言語学上の規範形でアオリストのアスペクトを指す)をとり、現在形等のテンスの基本形である継時形(継時的アスペクト)と語形が大きく異なるものも多い。

基本的には、古典ギリシア語にあった与格が消滅したものの、また、動詞の体系が、瞬時相と継時相(アスペクトの相違)に分化がすすみ、迂言形が発達するも、また、不定形が消失するも、コイネー以来の文法形態素・基本の(人称語尾)活用形の基礎を保持している。ただし、語順に規制的な拘束性が増した。

文字・発音・記号

ギリシア文字も参照すること。

  • α=/a/(アルファ)
  • β=/v/(閉鎖音から摩擦音に紀元後数百年に変異)(ベータ)
  • γ=/γ/, 但し前舌母音の前では/j/ (ガンマ)
  • δ=/ð/(閉鎖音から摩擦音に紀元後数百年に変異)(デルタ)
  • ε=/e/(イプシロン)
  • ζ=/z/(ゼータ)
  • η=/i/(後1世紀から)(イータ)
  • θ=/θ/(英語の無声 th)(シータ)
  • ι=/i/(母音の前で硬口蓋化/j/)(イオタ)
  • κ=/k/(/i, e/の前では /c/)(カッパ)
  • λ=/l/(ラムダ)
  • μ=/m/(ミュー)
  • ν=/n/(ニュー)
  • ξ=/ks/(クシー)
  • ο=/o/(オミークロン)
  • π=/p/(ピー)
  • ρ=/r/(ロー)
  • σ, ς=/s/(有声子音の前で/z/)(シグマ)
  • τ=/t/(タウ)
  • υ=/i/(移行期の/y/を経て後5世紀乃至10世紀に変異)(ウプシロン)
  • φ=/f/(紀元後数百年に変異)(ファイ)
  • χ=/x, ç/(紀元後数百年に変異)(カイ)
  • ψ=/ps/(プサイ)
  • ω=/o/(オメガ)

記号:ディモティキ(民衆口語)では、いわゆる「トーノス」(τόνος)の記号類は「´」のみの「モノトニコス化」(単強勢化)され簡略化され、気息記号「‘」〈/h/〉(音韻上で無標である有気音記号)、「’」等は廃され、「`」「^」等は、「´」に融合され、有強勢(文法的に有標の際)のみ「´」で記される。またこの強勢記号は語末から3番目の音節のうちに置かれる。(カサレヴサでは古典語のテキスト表記に倣った古典式の記号・符号を維持している。)

疑問符はセミコロン(;)を用いる。

冠詞

主格:Nominativus;男性=o /ο 女性=i/η 中性=to/το 男性複数=oi/οι f/pl=oi/οι n/pl=ta/τα
対格:Accusativus;男性=ton/τον f=tin/την n=to/το   m/pl=tous/τους f/pl=tis/της n/pl=ta/τα
属格:Genetivus:  m=tou/τους  f=tis/τις n=tou/του  m/pl=ton/των  f/pl=ton/των n/pl=ton/των 

不定冠詞

主格:Nominativus;男性=enas/ενας 女性=mia/μια 中性=ena/ενα
対格:Accusativus;男性=ena(n)/ενα f=mia/μια  n=ena/εμα
属格:Genetivus:  m=enos/ενος  f=mias/μιας n=enos/ενος   (複数形は無標)

名詞 

O曲用(第2曲用)(m.)
Nom=-os/ος Acc=-o(n)(nはカサレヴサ接尾)/ο(ν) Gen=-ou/ου
Nom/pl=-i(oi)/οι Acc/pl=-ous/ους Gen/pl=-on/ων
(f.)カサレヴサのみ:Nom=-os/ος Voc=-e/ε Acc=on/ον Gen=-ou/ου Dat=-o/ω
Nom/pl=-i(oi)/οι Voc/pl=-i(oi)/οι Acc/pl=-us(ous)/ους Gen/pl=-on/ων Dat/pl=-is(ois)/οις
(n.)Nom=-o(n)/ον(nはカサレヴサ接尾)Acc=-o(n)/ον(nはカサレヴサ接尾)Gen=-u(ou)/ου Dat=o/ω(カサレヴサ接尾)  Nom/pl=-a/α Acc/pl=-a/α Gen/pl=-on/ων
子音曲用(第3曲用)(m.)
Nom=ゼロ形 Acc=-a/α Gen=-os/ος
Nom/pl=-es/ες Acc/pl=-as/ας Gen/pl=-on/ων
(n.)Nom=-a/α Acc=-a/α Gen=-os(-us)/ος(-ους)
Nom/pl=-a/α Acc/pl=-a/α Gen/pl=-on/ων
A曲用(第1曲用)(m.)
Nom=-as/ας, Acc=-a/α Gen=-a/α
Nom/pl=-es/ες Acc/pl=-es/ες Gen/pl=-on/ων
(f.)Nom=-a/α Acc=-a/α(-an/ανはカサレヴサ接尾)Gen=-as/ας
Nom/pl=-es/ες(-e/αι(ai)はカサレヴサ接尾) Acc/pl==-es/ες(-e/αι(ai)はカサレヴサ接尾)Gen=-on/ων Dat=-es/αις(ais)(カサレヴサ接尾)

形容詞の活用語尾

(1:幹母音式曲用)Nom;m=-os f.=-i n.=-o Pl=m/-oi f/-es n./-a Acc;m=-on f.=-i n.=-o  Pl=m/-ous f/-es n/-a
Gen;m=-ou f.=-is n=-ou Pl=m/-on  f/-on n/-on
:例「大きい」:Nom;m=me'γal-os f.=me'γal-i n.=me'γal-o Pl=m/me'γal-i(綴字はoi) f/me'γal-es n./me'γal-a
Acc;m=me'γal-o(n) f.=me'γal-i n.=me'γal-o  Pl=m/me'γal-us(綴
字はous) f/me'γal-es n/me'γal-a
Gen;m=me'γal-u(綴字はou) f.=me'γal-is n=me'γal-u(綴字はou) Pl=m/me'γal-on  f/me'γal-on n/me'γal-on :
(2:無幹母音式曲用)Nom=-is f.=-ia n=-i   Pl=m/-ioi f/-ies n/-ia
Acc=-i  f.=-ia n.=i     Pl=m/-ius f/-ies n/-ia
Gen=-iou f=-ias n.=iou  Pl=m/-ion f/-ion n/-ion

:例「深い」:Nom=va'θ-is f.=va'θ-ja(口蓋化-ia) n=va'θ-i   Pl=m/va'θ-ji(綴字は-ioi) f/va'θ-jes(-口蓋化-ies) n/va'θ-ja(-口蓋化(-ia))
Acc=va'θ-i  f.=va'θ-ja((-口蓋化)-ia) n.=va'θ-i   Pl=m/va'θ-jus(-口蓋化)-ius) f/va'θ-jes(-口蓋化-ies) n/va'θ-ja((-口蓋化)-ia)
Gen=va'θ-ju((-口蓋化)-iou) f=va'θ-jas((-口蓋化)-ias) n.=va'θju((-口蓋化)-iou)  Pl=m/va'θ-jon((-口蓋化)-ion) f/va'θ-jon((-口蓋化)-ion) n/va'θ-jon((-口蓋化)-ion)

動詞組織

アオリスト語幹による、Punctual Aspectのアオリスト未来、アオリスト命令形が発達し、アオリストと同様、頻繁に使用され、コイネーの語幹がそのままの形で現在も存続している。 現在語幹は、比較的新しい語形で、現在語幹に嘗てはアオリストの語尾であった、第2次人称語尾が接尾され、未完了過去を形成し、発展させた。

また、希求法は接続法に融合し、代わりに条件法が導入された。

Perfectiveである完了のアスペクトも迂言形で、助動詞exoを使い、haben(have)動詞のように時制変化して迂言形完了形を形成(語幹はアオリスト語幹)する。 未来時制は、θαを接頭辞とするアオリスト語幹のアオリスト未来が創造され頻繁に使用される。語幹の相違で現在のアスペクトの未来と峻別される。語尾は第1次人称語尾がともに使用される。 過去時制は、先に述べたように、現在語幹に第2次人称語尾を接尾した未完了過去と、アオリスト語幹に第2次人称語尾を接尾したアオリストが対立する。この用法の体系はロマンス語の「半過去と点過去の対立」と類似する。

未来完了、現在完了、過去完了は先にのべたとおり、εχω アオリスト語幹に ειを接尾した複合形が成立する。接続法は、ναを附した迂言形で語幹は現在語幹+第1次人称語尾形(継時相):アオリスト語幹+第1次人称語尾形(瞬時相)である。条件法はθαを附した迂言形で語幹は現在語幹+第2次人称語尾形(継時相):アオリスト語幹+第2次人称語尾形(瞬時相)である。

活用の第1次人称語尾形の基本は、1人称単数:2人称単数:3人称単数:1人称複数:2人称複数:3人称複数の順でそれぞれ、-o(1p/sg),-is(2p/sg),-i(3p/sg),-ume(1p/pl),-ete(2p/ol),-un(3p/pl):「見る」の例:'vlepo,'vlepis,'vlepi,'vlepume,'vlepete,'vlepun:母音融合動詞の活用例「愛する」:aγa'po,aγa'pas,aγa'pai,aγa'pame,aγa'pate,aγa'pane:「できる(can)」:bo'ro,bo'ris,bo'ri,bo'rume,bo'rite,bo'run:第2次人称形の基本は、-a(1p/sg),es(2p/sg),-e(3p/sg),-ame(1p/pl),-ate(2p/pl),-an(2p/pl):IMPERFECTUMの典型例:「書いた」:'eγrafa,'eγrafes,'eγrafe,'γrafame,'γrafate,'eγrafan,[踊った]'xoreva,'xoreves,'xoreve,xo'revame,xo'revate,'xorevan:母音融合動詞「愛していた」:aγa'pusa,aγa'puses,aγa'pusame,aγa'pusate,aγa'pusan である。 中・受動態は、先にならい、-ome(1p/sg),-ese(2p/sg),-ete(3p/sg),-omaste(1p/pl),-este(2p/pl),-onde(3p/pl):例「見みられている」'vlepome,'vlepese,'vrepete,vle'pomaste,'vlepeste,'vleponde:母音融合動詞「愛されている」aγa'pjeme,aγa'pjese,aγa'pjete,aγa'pjumaste,aγa'pjeste,aγa'pjunde:第2次人称語尾形は、先にならい、-omun/-omuna(1p/sg),-osun/-osuna(2p/sg),-otan/-otane(3p/sg),-omaste(1p/pl),-osaste(2p/pl),-ondan/-ondane(3p/pl):例「書かれていた」γra'fomuna,γra'fosuna,γra'fotane,γra'fomaste,γra'fosatste,γra'fondane:&c...の語尾音で形成される。命令形は2人称のみで、第1次の現在相は、-e(2p/sg),-ete(2p/pl):例「書け」'γrafe,'γrafete:,第2次のアオリスト相は、-e(2p/sg),-te(2p/pl)):例「書け」'γrapse,'γrapste:中・受動態の命令形はきわめてまれである。

その他の文法形態素

人称名詞

有強勢形:1人称;Nom/sg; e'γo  Acc & Gen/sg; (e)'mena 
Nom/pl; (e)'mis Acc & Gen/pl;(e)'mas :2人称;Nom/sg; e'si  Acc & Gen/sg;(e)'sena  Nom/pl; (e)'sis Acc & Gen/pl;e'sas
無強勢形;1人称;Acc/sg;me  Gen/sg;mu  Acc & Gen/pl;mas
2人称;Acc/sg;se Gen/sg;su  Acc & Gen/pl;sas

人称代名詞

有強勢形:英語のhe:af'tos 同she:af'ti 同it:af'to 同they (m.pl)af'ti (f.pl)af'tes (n.pl)af'ta 無強勢形:Acc:英語のhim:ton  同her:ti(n)  同it:to :英語のthem:(m.pl)tus (f.pl)tis (n.pl)ta

関係代名詞

カサレヴサの、(冠詞)+(代名詞o'pio);o o'opios : i o'pia : to o'pio (数・格・性は先行詞と一致)を用いるのが商業文・行政文・公的文書では普通である。民衆口語体の 無トーノスの pu も口語では用いられるが、どこに係るのか不明なため教養人はこれをもちいない。

前置詞

Dativus の代わりに、se + Acc.(標準方言)、もしくは、a'po + Acc.(北部方言)が用いられる。

:a'na + Acc = の上で、によって(カサレヴサ): 'is (εις)+Acc=の中に(カサレヴサ): 'anef +Gen=なしに、以外に(カサレヴサ): an'di + Gen=代わりに(カサレヴサ): 'pro + Gen=の前に(カサレヴサ):

'δja + Acc=のために、 'δja + Gen=を通じて、経由して(カサレヴサ): ka'ta + Acc=によって、を通って(カサレヴサ): ka'ta + Gen=に対して me'ta + Acc=の後に、me'ta + Gen=とともに pe'ri + Acc=のまわりで pe'ri + Gen=に関して i'per + Acc=の上に i'per + Gen=のために 'pros + Acc=に対して、向かって 'pros + Gen=によって 'pros + Dat=そのうえ、以外に(カサレヴサ): 'ipo + Acc=の下に 'ipo + Gen=によって(...Gen=(カサレヴサ): 受身の実質的主体を表す)(口語は a'po + Acc.に拠り受身の実質的主体を表す):kon'da(+se/apo)+Acc.=近くに、'mesa(+se+Acc.)=内に、'ekso(a'po+Acc)=外に、bro'sta(+se+Acc.)=対面に・向かいに、'piso(+apo+Acc.)=うしろに、後に、'pano(+apo+Acc.)=上に、上部に、(口語の前置詞は,全てAcc.支配である)¶疑問詞:口語では、ti (カサレヴサ: tis)「何、何が」(方言では 'inda が広く用いられる):「誰が」の疑問は、'pjos (m.) 'pja(f.) 'pjo(n.) (カサレヴサにはnが附される:'pjon(n.)):「いつ」の疑問は、'pote :「どこ」の疑問は、'pu ¶否定辞:標準語は、δen :北ギリシアのポントス方言系では、/u'ki/(ουκι,ουχι)

語順

固定された語順

  1. 小辞(前置詞)+(被制辞となる)名詞句。
  2. 限定詞(冠詞)+名詞。
  3. (直接目的語の)人称代名詞(人称名詞)+動詞(但し、命令法と分詞の場合は転置)。
  4. 数詞+名詞群。
  5. 否定詞+動詞。
  6. (関係詞・接続詞)+(名詞句または動詞句)。(注:3は方言では転置される)

SVOが基本語順であるも、VSO、OVS(受動的な表現で)、VOS、OSV、SOV(格言の言いまわしにみられる)の全てが可能であり、許容される。

語彙形態素

ほとんどが、コイネーからの承継である。ギリシアの各地における方言に、その残渣がみられる。トルコ語の語彙素もかなりの頻度で用いられることが現代ギリシア語の特徴である。

文法形態素

カサレヴサの文法形態素は、古典ギリシア語と同一または類似(擬古形)である。口語については、上記を参照されたい。

方言

ツアコニア方言は、迂言法による動詞活用をおこなう。 εμι ορου,εσι ορου,ενι ορου,εμμε ορουντε,εττε ορουντε,εισι ορουντε(現在形「見る」の活用(3性変化:ορου,-α,-ντα))。

キプロス方言の文法要覧

活用例
a'kuo(1p/sg/praes),a'kuis(2p/sg/praes),a'kui(3p/sg/praes),a'kumen(1p/pl/praes),a'kuete(2p/pl/praes),a'kusin/a'kun(3p/pl/praes)(聞くの現在形)
(同中受動態形:IMPERFECTUM)e'kuumun(1p/sg/praesIMPERFECTUM),e'kuesun(2p/sg/praesIMPERFECTUM),e'kuetun(3p/sg/praesIMPERFECTUM),eku'umastin(1p/pl/praesIMPERFECTUM),e'kuestun(2p/pl/praesIMPERFECTUM),e'kuuntan(3p/pl/praesIMPERFECTUM)(聞いている)(能動態アオリスト:Aoristus)a'kuso(1p/sg/aor),a'kusis(2p/sg/aor),a'kusi(3p/sg/aor),a'kusumen(1p/pl/pl),a'kusete(2p/pl/aor),a'kusin/a'kusun(3p/pl/aor)
(能動態第2次人称語尾接尾の未完了過去:IMPERFECTUM)'ekua(1p/sg/imperfectum),'ekues(2p/sg/imperfectum),'ekuen(3p/sg/imperfectum),e'kuamen(1p/pl/imperfectum),e'kuete(2p/pl/imperfectum),e'kuasin(3p/pl/imperfectum)
(「アオリスト」能動態(「聞いた」)'ekusa(1p/sg/aoristus),'ekuses(2p/sg/aoristus),'ekusen(3p/sg/aoristus),e'kusamen(1p/pl/aoristus),e'kusete(2p/pl/aoristus),e'kusasin(3p/pl/aoristus)
中・受動態 現在形 基本形(第1次人称語尾形)a'kuume(1p/sg/praesens),a'kuese(2p/sg/praesens),a'kuete(3p/sg/praesens),aku'umastin(1p/pl/praesens),a'kueste(2p/pl/praesens),a'kuunte(3p/pl/praesens)
命令形:(現在)'aku(2p/sg/praesens),a'kute(2p/pl/praesens):(アオリスト) 'akuse(2p/sg/aoristus),a'kuste(2p/pl/aoristus)
語彙形態素(文法形態素)代用語(「誰、何」(pi'os))
Nominativus;(m.)'pcos  (f.)'pca  (n.)'inta
Accusativus;(m.)'pcon  (f.)'pcan  (n.)'inta
人称代名詞
Sg:Accsativus;(m.)ton  (f.)tin  (n.)to
Sg:Genetivus; (m.)tu  (f.)tis  (n.)tu
Pl:Accusativus;(m.)tus  (f.)tes (n.)ta
Pl;Genetivus; (m)tus  (f.)tus  (n.)tus
人称名詞
有強勢形;1人称;Nom/sg; e'jo(ni) Acc & Gen/sg; e'menan
Nom/pl; e'mis Acc & Gen/pl;e'mas :2人称;Nom/sg; e'su(ni)  Acc & Gen/sg;e'senan  Nom/pl; e'sis Acc & Gen/pl;e'sas
無強勢形;1人称;Acc/sg;me  Gen/sg;mu Acc & Gen/pl;mas
2人称;Acc/sg;se Gen/sg;s  Acc & Gen/pl;sas

南イタリアのギリシア方言: プッリャのオトラントと南カラブリアのBovaの方言:破擦音/t∫/、イタリア語と同様の重子音、子音連続の硬口蓋化、連続する子音の同化、喉音の発達、動詞中・受動態の未完了過去3人称単数人称語尾-ενο、アオリスト命令形-σο、アオリスト分詞の存続:-γραφοντας, φονασοντας、不定形の名詞的用法の保持;το κλαφει σου=το κλαμα σου, το απεσαει =το αποθανειν:¶その他の方言でも、音韻変化において閉鎖音から摩擦音への遷移過程(通時言語学的現象)、前舌化、上昇・閉音化、中音化(centralisation)の現象・シュー(/∫/)音化・/t∬/音化・躁音化・無声軟口蓋閉鎖音の硬口蓋閉鎖音化等さまざまの音韻変化が諸方言に分散し、古代ギリシア語からコイネーの時代を経て現代の各地域の方言・またコイネーからアテネ方言への推移をも通時言語学・共時言語学において論証することができる。

特に如上のキプロス方言、またクレタ方言等は現在も遡及の可能な多量の文献が存在するので、現代語の通時的推移・共時的視野を論証させてくれる。また、母音交替・子音交替・語中音(γ)添加.語尾音(ν)の添加、ふるえ音化等のさまざまな音韻変化または交替現象・古典語からの伝統である音便νの保持など、現代の諸方言は、古典からコイネーを経て分散した各方言の通時・共時言語学上の貴重な音韻変化を現在も維持している。現代の現用言語(langue vivante)である「ギリシア語」は、古代からの継続言語であり、「現用言語のギリシア語」の完全な理解には古典ギリシア語の素養も不可欠である。

関連項目

Α,α=/a/,Β,β=/v/(閉鎖音から摩擦音に紀元後数百年に変異),Γ,γ(ガンマ)=/有声のth*(英語)/(但し前舌母音の前では/j/),Γ,δ=/摩擦音のg/(閉鎖音から摩擦音に紀元後数百年に変異),Ε,ε=/e/,Ζ,ζ=/z/,Η,η=/i/(後1世紀から),Θ,θ=/無音のth(英語)/=/θ/,Ι,ι=/i/(母音の前で硬口蓋化/j/),Κ,κ=/k/,Λ,λ=/l/,Μ,μ=/m/,Ν,ν=/n/,Ξ,ξ=/ks/,Ο,ο=/o/,Π,π=/p/,Ρ,ρ=/r/,Σ,σ(但し語尾では:ς)=/s/(有声子音の前で/z/),Τ,τ=/t/,Υ,υ=/i/(移行期の/y/を経て後5世紀から10世紀に変異),Φ,φ=/f/(紀元後数百年に変異),Χ,χ=/(ドイツ語のichの)ch/(但し、/a,o、u,/および子音の前では/x/)(紀元後数百年に変異),Ψ,ψ=/ps/,Ω,ω=/o/ (*ΓΓ=ディガンマ(F)は、現在のツアコニア方言では=βで存続するも、前8世紀頃に消滅)

表現

基本表現:こんにちは=σας καλιμέρα または καλιμέρα σας
こんばんは(午後の挨拶)=σας καλισπέρα または καλισπέρα σας
お元気ですか=Πώς εέστε; または Τι κάνετε;(; は疑問符)
はい='malista またはくだけた表現で ναι
いいえ=Όχι
いつ(何時)='pote ?
どこ(何処)='pu 'ine ?
だれ(何人)=(男性形:pi'os)(女性形:pi'a)
はい、元気です。で、あなたはいかがですか=Καλά ευχαριστώ. Και εσεις;
ようこそお越しくださいました=ka'los 'irθate 
お目にかかれて恐悦至極です=ka'los sas 'vrika または po'li 'χerome 'vrepo
どうぞおはいりください=pe'raste paraka'lo
どうもありがとうございます=sas po'li efxari'sto
どういたしまして=sas paraka'lo
ほんとうにすみません=li'pume po'li
どうなさられたのですか=ti sim'veni
なんでもございません='tipote または 'tipota
ほんとうですか=a'liθia ;
ちょっと手をかしてくれませんか=bo'rite na me voi'θisete ;
なにをお望みですか=ti'θelete ;
ちょっと待っていてください=peri'menete li'γaki paraka'lo または peri'menete ena le'pto paraka'lo
お会いできて嬉しい='χero po'li
知り合えて嬉しい='χerome na sas γno'riso
楽しいときをすごさせていただきました=pe'rasame o'rea または
'xarika po'li!
ごちそうさま=ka'li 'xonepsi
いつでも来てください=e'late 'opote 'θelete または 'jia xa'ra!
おいとまします(ごめんください)='χerete または sas a'di:o!
またお会いしましょう=ka'li an'damosi
よい旅をお祈りします=ka'lo ta'ksiδi
すみませんここを通してください=paraka'lo a'fiste na me pe'raso
早く医者を呼んでください=ka'leste 'γriγora 'ena jia'tro
どうしたのですか=ti'eχete ?
早く良くなってください=e'lpizo na 'jineste ka'la 'sindoma
ここに来てください!=e'late na 'δite!
これはおいくらですか='poso 'kani a'fto または 'poso kos'tizi a'fto
(我々は)とてもたのしかった=pe'rasame o'rea! または
'xarika po'li!
同慶の至りです=singxari'tiria!
乾杯!='sti ji'a mas または形式的表現では ='sti ji'a sas !
御成功を祈ります=ka'li epiti'χia!
貴下に感謝しております=sas 'ime i'poxreos
了解(わかっています)=ka'talava!
一時にあの場所でお会いしましょう=θa sinandi'θume e'ki stj'mia!
(注意;*χ=ドイツ語のichの/ch/の音価)

文献

現代ギリシあ語の基礎(八木橋正雄著)大学書林(1984年)刊。(カサレヴサとデモティキの比較も載せられ方言にも配慮した唯一の日本語文献) HANDBUCH DER NEUGRIECHISCHEN VOLKSSPRACHE/ALBERT THUMB著、初版は1910年,復刻版は1974年(DE GRUYTER刊)。(口語民衆語文法・方言をも記載した記述文法。)(「現代ギリシャ民衆口語ハンドブック」八木橋正雄(私家版)1992年刊の翻訳が存在する。) 日本ギリシア語ギリシア文学会発行雑誌「プロピレア」第4号(1992年刊)第49-55頁,同誌第11号(1999年刊)第40-46頁に、「現代ギリシャ語キプロス方言のアウトライン」(八木橋正雄著)(キプロス方言の記述文法を記述。) 現代ギリシアの言語と文学(関本至著)渓水社(1987年)刊。(小論文集) 現代ギリシア語文法(関本至著)泉屋書店(1968年)刊。(現代ギリシア語ディモティキの規範文法書) (2004年現在の主要な日本語の文献目録)。

tokipona:toki_Elena