アルゼンチンの副大統領

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アルゼンチンの旗 アルゼンチン共和国
副大統領
Vicepresidente de la Nación Argentina
国章
現職者
ビクトリア・ビヤルエル(第38代)
Victoria Villarruel

就任日 2023年12月10日
任命直接選挙
任期4年(最長2期)
初代就任サルバドール・マリア・デル・カリル
創設1854年3月5日

アルゼンチンの副大統領(あるぜんちんのだいとうりょう、スペイン語: Vicepresidente de la Nación Argentina)は、アルゼンチンの行政府を代表する第2位の官職である。4年ごとに実施される総選挙によって、アルゼンチン大統領と共に選出される。現職の副大統領は2023年12月10日に就任したビクトリア・ビヤルエルである。1994年の憲法改正英語版では大統領と同様に副大統領の任期も、6年(再選不可)から、共同チケットの再選により更新可能な4年(3選禁止)に変更された。

歴史[編集]

選挙人団により、アルゼンチン連合大統領のフスト・ホセ・デ・ウルキーサと共に、副大統領であるサルバドール・マリア・デル・カリルが最初であったが、当時は憲法で副大統領の職務は具体的に明記されていなかった。20世紀半ばは、フアン・ペロン大統領への辞任を求めた1955年の軍事クーデター(自由革命スペイン語版)やアルゼンチン革命などで副大統領職が空席になった例が17回もある。稀に副大統領のクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネルが全閣僚の任免に関わるなど、大統領を凌ぐ影響力を持つ例もあった[1]

職務[編集]

大統領継承順位1位にあり、アルゼンチン大統領が死亡・辞任・免職などにより欠けた場合は、副大統領が大統領に昇格する。事故・病気・外遊などにより大統領が一時的に職務遂行不能になった場合は、副大統領が臨時に大統領権限を代行する。大統領の名代として儀式に参列したり、外交上の接受や表敬訪問を行ったりする職務も大統領から委任される事例もある。

上院議長[編集]

2020年の上院閉会式を主宰するクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル(中央)

副大統領はアメリカ合衆国副大統領と同様に、上院議長(じょういんぎちょう、スペイン語: Presidenta del Senado)を兼務し、可否同数の場合のみ均衡を破る1票(議長決裁票スペイン語: Voto de calidad)を投じる[2]。旧来は実際に上院本会議の議事を主宰していたが、今日では議事を主宰することは稀である。現代では通常の議事進行を上院仮議長が行う。

国家的な儀式としての重要性の高い議長職務は今日でも副大統領自身が務める。通常議会の開会・閉会や大統領就任宣誓、上下両院合同会議では、下院議長と共に共同議長として下院本会議場議長席に立つ。上院の改選・補欠選挙、あるいは補欠選挙まで務める議員の任命が行われた際、議長として本会議で議員の着任を宣言し就任宣誓を取り仕切ることも副大統領が自ら行う。

副大統領の一覧[編集]

アルゼンチン連合(1831年-1861年)[編集]

# 氏名 着任 離任 備考
1 サルバドール・マリア・デル・カリル英語版 1854年3月5日 1860年3月5日
2 フアン・エステバン・ペデルネラ英語版 1860年3月5日 1861年11月5日 サンティアゴ・デルキ大統領の辞任に伴い、就任後僅か1年で大統領に昇格。

アルゼンチン共和国(1861年-現在)[編集]

# 氏名 着任 離任 備考
3 マルコス・パス英語版 1862年10月12日 1868年1月2日 在職中に死去。
4 アドルフォ・アルシーナ英語版 1868年10月12日 1874年10月12日
5 マリアノ・アコスタ英語版 1874年10月12日 1880年10月12日
6 フランシスコ・ベルナベ・マデロ英語版 1880年10月12日 1886年10月12日
7 カルロス・ペレグリーニ 1886年10月12日 1890年10月12日 ミゲル・アンヘル・フアレス前大統領の辞任に伴い、大統領に就任。
8 ホセ・エバリスト・ウリブル英語版 1892年10月12日 1895年1月22日 ルイス・サエンス・ペーニャ前大統領の辞任に伴い、大統領に就任。
9 ノルベルト・キルノ・コスタ英語版 1898年10月12日 1904年10月12日
10 ホセ・フィゲロア・アルコルタ英語版 1904年10月12日 1906年3月12日
11 ビクトリノ・デ・ラ・プラザ英語版 1910年10月12日 1914年8月9日
12 ベラジオ・ルナ英語版 1916年10月12日 1919年6月25日
13 エルピディオ・ゴンザレス英語版 1922年10月12日 1928年10月12日
14 エンリケ・マルティネス英語版 1928年10月12日 1930年9月6日
15 エンリケ・サンタマリナ英語版 1930年9月6日 1930年10月20日
16 フリオ・アルヘンティーノ・パスクアル・ロカ英語版 1932年2月20日 1938年2月20日
17 ラモン・カスティジョ英語版 1938年2月20日 1942年6月27日
18 サバ・スエイロ英語版 1943年6月7日 1943年10月15日
19 エデルミロ・ジュリアン・ファーレル英語版 1943年10月15日 1944年2月24日
20 フアン・ペロン 1944年7月8日 1945年10月10日 事実上の副大統領。軍人出身。
21 フアン・ピスタリーニ英語版 1945年10月10日 1946年6月4日 軍人出身。
22 オルテンシオ・キハノ英語版 1946年6月4日 1952年4月3日
23 アルベルト・テイゼーレ英語版 1954年5月7日 1955年9月23日 軍人出身。
24 アイザック・ロハス英語版 1955年9月23日 1958年5月1日
25 アレハンドロ・ゴメス英語版 1958年5月1日 1958年11月18日
26 カルロス・ウンベルト・ペレット英語版 1963年10月12日 1966年6月28日
27 ビセンテ・ソラノ・リマ英語版 1973年5月25日 1973年7月13日
28 イザベル・ペロン 1973年10月12日 1974年7月1日
29 ビクトル・イポリト・マルティネス英語版 1983年12月10日 1989年7月8日
30 エドゥアルド・ドゥハルデ英語版 1989年7月8日 1991年12月10日
31 カルロス・ルカウフ英語版 1995年7月8日 1999年12月10日
32 カルロス・アルバレス英語版 1999年12月10日 2000年10月6日
33 ダニエル・シオリ英語版 2003年5月25日 2007年12月10日
34 フリオ・コボス英語版 2007年12月10日 2011年12月10日
35 アマド・ブードゥー英語版 2011年12月10日 2015年12月10日
36 ガブリエラ・ミケッティ英語版 2015年12月10日[3] 2019年12月10日
37 クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル 2019年12月10日[4] 2023年12月10日 アルゼンチン元大統領及び元ファーストレディ
38 ビクトリア・ビヤルエル 2023年12月10日 (現職)

脚注[編集]

  1. ^ 3閣僚が交代、後任決定にキルチネル副大統領は関与せず”. jetro.go.jp. 2023年6月11日閲覧。
  2. ^ Organigrama del Poder Ejecutivo nacional argentino アーカイブ 2012年1月4日 - ウェイバックマシン, publicado en el sitio web SGP (Buenos Aires).
  3. ^ Las 20 frases del discurso de Macri durante la asunción como presidente”. Clarin. 2023年6月11日閲覧。
  4. ^ NÚMERO DE EXPEDIENTE 3320/19” (スペイン語). Senado de Argentina (2019年11月27日). 2019年11月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月11日閲覧。

関連項目[編集]