ホセ=アントニオ・アルベス

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ホセ=アントニオ・アルベス
アルベス(左)とコインブラ[1]
生誕 ケンデレ(Kendele または Kenuedélé)
1820年
アンゴラの旗 アンゴラ
死没 1877年より消息不明
死没地不明
国籍 アンゴラの旗 アンゴラ
職業 奴隷貿易商人
活動期間 1875-?
著名な実績 奴隷売買
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ホセ=アントニオ・アルベス (ポルトガル語: José-Antonio Alvez、1820年 - 没年不詳) は19世紀ポルトガルの奴隷商人。アフリカ出身で、土地の人間にはケンデレ (Kendele) という名前で知られていた。

彼の名前がヨーロッパで知られるようになったのは、イギリス人探検家、ヴァニー・ラヴェット・キャメロン英語版の著書「アクロス・アフリカ」による。ジュール・ヴェルヌの冒険小説『十五歳の船長』の登場人物であるアルベスは彼がモデルとなっている。

経歴[編集]

アルベスは1820年にポルトガルの植民地アンゴラで生まれた。彼は地元の人間にはケンデレという名前で知られていた。彼についての情報は、インド洋から大西洋まで、フランス領赤道アフリカを横断した最初のヨーロッパ人であるヴァニー・ラヴェット・キャメロンによって記録された。アルベスは、旅行団の規模が小さすぎて襲われる可能性があることを指摘し、みずからガイド役を買って出た。1875年2月末、彼らは一緒にキレンバからアンゴラ西海岸に向けて出発した。キャメロンは、著書「アクロス・アフリカ」で、アルベスを「年老いた醜い黒人」と書いている。キャメロンは彼をムズング(ヨーロッパ系)の人だと信じていたので、実際の彼の人種に驚いた。キャメロンは次のように書いている。

もちろん、彼はヨーロッパ系の服装でポルトガル語を話していましたが、自分は文明的で、イギリス人や他の白人と同じであると何度も断言したにもかかわらず、それ以上の礼節を感じることはできませんでした。彼が強く主張したのは決して嘘をつかないこと、自分の言葉は彼の約束手形であり、地球上でもっとも正直な人間であるということでした[2]

アルベスはキャメロンに対して気を許したか、自分はアンゴラのクアンザ川英語版流域のドンド (アンゴラ)英語版出身だと言った。彼は1870年代にこの地を出て西アフリカをまわり、奴隷貿易を行なった。当初は白人商人の助手だったが、独立して2年の間カサンギと[2]ビエ州にいくつかの拠点を作った。地元でクアルンバと呼ばれていた、奴隷商人のロレンツォ・スーザ・コインブラとともに大規模な奴隷拉致組織を作り、奴隷隊商を送り出した。アルベスの消息は1877年以降途絶えている。

フィクションへの登場[編集]

アルベス
カゾンデ村にタバコを贈るアルベス(中央)[1]
初登場十五歳の船長』(1878年)
最後の登場 『十五歳の船長』(1878年)
作者 ジュール・ヴェルヌ
詳細情報
性別 男性
職業 奴隷貿易商人
国籍 アンゴラの旗 アンゴラ
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アルベスは、1878年に出版されたフランスの作家、ジュール・ヴェルヌによる冒険小説『十五歳の船長』といくつかの映画の登場人物として名を広めた。小説の主なテーマは、奴隷貿易とそれに付随する行為への非難である。ロシアの作家、エフゲニ・パブロヴィッチ・ブランディスロシア語版によると、この本の「最も明朗なページ」は、ジャーナリズムの感傷で書かれた奴隷貿易の恐怖と人間狩りへの非難であり、それらはヴェルヌによって研究された情報源に基づいている。奴隷貿易の禍々しき人物、ポルトガルのネゴロとコインブラ、アメリカのハリス、アラブのイブンカミス、危険な黒人アルベスは決して著者の想像力の産物ではなく、現実に存在したことが知られている。ヴェルヌは、何万人もの仲間の部族を奴隷商人に売ったこの怪物についての情報を、彼自身が示したように、イギリス人旅行者キャメロンの手記から集めた[3]。さらに、キャメロンは小説に登場した別の実在の奴隷貿易商人ロレンツォ・スーザ・コインブラについての情報も持っていた[2]。それによると、アルベスがカゾンデ村の王、ムアニ・ルンガの権力に服し、アンゴラのこの地域をほぼ完全に支配したとしている。キャメロンはアルベスを次のように特徴づけた。

年配の男性であるホセ=アントニオ・アルベスは「ムスング」、つまり白人種に属していなかった。もちろん、商業的な理由で彼が話していたポルトガル語の名前しかなかったが、アルベスはケンデレという名前の黒人だった。クワンザ川のほとりにあるドンドで生まれ、奴隷貿易業者の代理人としてキャリアをスタートさせた。自分自身を世界で最も正直な男と呼んだこの古めかしい悪党は、黒人奴隷の最大の人身売買業者の一人となった[4]

脚注[編集]

  1. ^ a b ジュール・ヴェルヌ『十五歳の船長』より、アンリ・メイエによる挿絵。
  2. ^ a b c Камерон 1981.
  3. ^ Брандис 1957.
  4. ^ Верн 1941.

参考文献[編集]

  • Андреевский, Георгий. (2008). "Глава девятая. В советской школе". Повседневная жизнь Москвы в сталинскую эпоху. 1930—1940-е годы. М.: Молодая гвардия. pp. 290–370. ISBN 978-5-235-03124-1
  • Брандис, Евгений. (1957). "Комментарий. Пятнадцатилетний капитан". Верн, Жюль. Собрание сочинений в 12 томах. Том 08. Черная Индия. Пятнадцатилетний капитан. Пятьсот миллионов Бегумы. М.: Государственное Издательство Художественной Литературы. pp. 707–711.
  • Верн, Жюль. (1941). Пятнадцатилетний капитан. Школьная библиотека. Для неполной средней и средней школы. М.; Л.: Детиздат ЦК ВЛКСМ. Перевод с французского И. Петрова. — Художник Г. Мейер.
  • Камерон В.Л. (1981) [Across Africa]. Пересекая Африку. Рассказы о странах Востока (15000 экз ed.). М.: Наука. Пер. с англ., вступ. ст. и примеч. Л.Е. Куббеля.
  • Кожевников А. Ю. (2007). Крылатые фразы и афоризмы отечественного кино. М.: Олма медиа групп. ISBN 978-5-373-00972-0