ヤマトウシオグモ

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ヤマトウシオグモ
ヤマトウシオグモ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata
: クモ綱 Arachnida
: クモ目 Araneae
亜目 : クモ亜目 Opistothelae
下目 : クモ下目 Araneomorpha
階級なし : 完性域類 Entelegynae
: ウシオグモ科 Desidae
: ウシオグモ属 Desis
: ヤマトウシオグモ D. japonica
学名
Desis japonica Yaginuma, 1956
和名
ヤマトウシオグモ

ヤマトウシオグモ Desis japonica Yaginuma, 1956 は、ウシオグモ科クモの1種。岩礁海岸潮間帯に住み、満潮時には海水中で過ごす。

特徴[編集]

上顎がよく発達したクモで、体長は雌雄共に6mm程度であるが、上顎を合わせると8mmになる[1]頭胸部は縦長で、頭部は幅広くなっている。中窩は縦向きになっており、放射溝頸溝は明瞭に入る。は8眼2列に配置し、その範囲の幅は頭部の幅の約半分あり、前列眼はほぼ真横真っ直ぐに並び、後列眼は強く後曲、つまり中眼より側眼がはっきりと後方に位置する。前中眼の間隔は狭くて中眼の径より短く、中眼と側眼の間は眼の径とほぼ同じ程度。後中眼の間隔は眼の径の約2倍あり、後中眼と後側眼の間は眼の径の1.5倍ほど。上顎は長くて前に突き出しており、その長さは背甲の長さよりやや短い程度である。上顎には外顆があり、上顎の内側にある前牙堤と後牙堤には前に7本、後に2本の歯があってそれぞれ顎の基部から等間隔に配置している。雄では触肢が長く発達し、その脛節の外部に先端が2つに分かれた突起がある。糸疣には篩板はなく、大きな間疣がある[2]

体色は背甲が赤褐色で後方の色が暗くなっており、特に頸部の両肩が黒褐色となっている。胸板は褐色で周辺の色が濃くなっている。歩脚は黄褐色で第1脚の基節は暗褐色。腹部は黄褐色で灰色の毛に覆われている。

分布[編集]

かつては南半球にわたる広い分布を持つものと考えられていた[3]が、現在では日本固有種とされており、国内での分布は本州の南岸域、四国九州、それに南西諸島となっている[4]

タイプ標本和歌山県白浜で採集された雄成体であり、トカラ列島宝島で採集された雌成体と合わせて記載された[5]

生態など[編集]

生息環境は海岸潮間帯である[6]。貝やフジツボの空き殻、岩の凹みなどに袋状の巣を作り、満潮時には海水の水面下でこの中に籠もって過ごす。干潮時に干出すると外に出て徘徊して獲物を探す。成体の出現する時期は5~8月である[7]

分類など[編集]

本種の属するウシオグモ属には世界で14種があり、主に南半球から知られており、日本では本種のみが知られている[8]。その点では他に似たものはない。Yaginuma(1956) によると本属のものとしてはニュージーランドオーストラリアニューカレドニアから知られている D. marina がよく似ているとのことで、本属の他種と本種を区別する特徴としては眼の配列、特に後中眼が互いに接近すること、上顎の長さが背甲の長さを超えないことがあげられている[9]

本属のクモは何れも潮間帯に生息することが知られている[10]。海岸に生息するクモは種数は少ないが他にもあり、例えば本種と同科のイソタナグモ Paratheuma shirahamaensis も海岸性の種であるが、その生息域は潮間帯より上の海水に浸らない場所である。

出典[編集]

  1. ^ 以下、主として岡田他(1988) p.378
  2. ^ 小野編著(2009) p.150
  3. ^ 岡田他(1988) p.378
  4. ^ 小野、緒方(2018) p.550
  5. ^ Yaginuma(1956)
  6. ^ 以下も小野編著(2009) p.151
  7. ^ 小野、緒方(2018) p.550
  8. ^ 小野編著(2009) p.150
  9. ^ Yaginuma1956)
  10. ^ 小野編著(2009) p.150

参考文献[編集]

  • 小野展嗣編著、『日本産クモ類』(2009)、東海大学出版会
  • 小野展嗣、緒方清人、『日本産クモ類生態図鑑』(2018)、東海大学出版部
  • 岡田要他、『新日本動物圖鑑 〔中〕』9刷、(1988)、北隆館
  • Takeo Yaginuma, 1956. A New Species of Marine Spider Desis from Japan. Publ. Seto Biol. Lab., V(3): p.62-64.