ひっくり返しシャフル

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ひっくり返しシャフル(ひっくりかえししゃふる、: topswops, reverse card shuffle)は、英国出身の数学者コンウェイの考案した一人用ゲーム[1] [2]。数字1から数字n までの合計n 枚のカードで遊ぶ。無限ループに入ることなく、 必ず有限回で終了する。

ゲームのルール[編集]

数字1から数字n までの合計n 枚のカードをよく切り、横1列に並べる。(サイズn のゲームと呼ぶ。左端を一番上、右端を一番下と呼ぶ。) 以下のシャフル操作を繰り返す。

一番上のカードが数字1以外の数字k ならば、1番上からk 番目までの k 枚のカードの数字の左右順番を反転する。

一番上のカードが数字1なら終了する。

  • 例 数字1から数字4までのカードで開始状態4,2,1,3から開始すると、

4,2,1,3 → 3,1,2,4 → 2,1,3,4 → 1,2,3,4 となり、3回のシャフルで数字1が一番上にきて終了する。  

性質[編集]

  • 1以上のどんなサイズのどんな開始状態からはじめても必ず有限回のシャフルでゲームが終了する。

サイズnのゲームの終了までの最大シャフル回数をとすると、 である。

  • は2のべき乗  以下である。(Wilfの結果)
  • 番目のフィボナッチ数 以下である。 (Klamkinの結果)  
  • 特別なn の場合、サイズnのゲームがちょうど最大シャフル回数で終了すると、一番上から順に 数字1から数字nまでが小さい順に整列する。しかし一般には整列しない。

基本的現象[編集]

主役の数字と脇役の数字

1つのゲーム中に一番上にくるカードの数字を 主役の数字、決してこない数字を脇役の数字と呼ぶ。 1つのゲームの開始状態で脇役の数字2つの位置を交換しても、 ゲーム終了までのシャフル回数は同一である。

最大主役の数字

1つのゲームの主役の数字の個数をt 個とし、t 個中で最大の数字をM とする。 最大主役の数字M がはじめて一番上にくると、以後2度と一番上にこない。 他の主役の数字はM より小さいので、以後数字M の位置にシャフル範囲が及ばない。

重大主役の数字

1つのゲーム中で最大主役の数字M が一番上に出現した直後に主役となる数字を 重大主役の数字という。重大主役の数字はそのゲーム中で最大主役の主役登場後にはじめて一番上にくる。 重大主役は主役となるまでは上からM 番目の位置であった。 重大主役が数字1ならゲーム終了で、2以上の数字ならゲームは続く。

後半ゲーム

最大主役の数字MM 番目の位置で、重大主役の数字がはじめて一番上にいる状態からのゲームを 後半ゲームと呼ぶ。後半ゲームの主役の数字の個数は、もとのゲームの主役の数字の個数より 1以上小さい。

変形版の前半ゲーム

1つのゲームでr 回のシャフルではじめて最大主役の数字M が一番上に出現したとすると、開始状態の数字1と最大主役の数字M の位置を交換した開始状態で ゲームを開始すると、同じくr 回のシャフルで数字1が一番上にきてゲームが終了する。 このゲームを変形版前半ゲームと呼ぶ。 変形版前半ゲームの主役の数字の個数は、もとのゲームの主役の数字の個数に比べ、 重大主役が1なら、最大主役がいないため1以上小さく、重大主役が2以上なら、最大主役と重大主役がいないため2以上小さい。

  • 例 ゲーム 3,1,4,5,2 → 4,1,3,5,2 → 5,3,1,4,2 → 2,4,1,3,5 → 4,2,1,3,5 → 3,1,2,4,5 → 2,1,3,4,5 → 1,2,3,4,5 の最大主役の数字は5で、重大主役の数字は2である。最大主役5は一度一番上にくると2度と一番上にこない。重大主役2は、最大主役5によるシャフルで一番上にくるので、それ以前は一番上にこない。2,4,1,3,5から終了までのゲームが後半ゲームで、開始状態の数字1と最大主役の数字5を交換したゲーム3,5,4,1,2 → 4,5,3,1,2 → 1,3,5,4,2 が変形版前半ゲームである。
的中数字の総得点

数字jが上からj番目の位置にいる場合、この数字jを的中数字と呼ぶ。 的中数字に得点を与え、上から1番目なら1点、2番目なら2点、 3番目なら4点、...、 j番目なら点を与え、 的中数字すべての得点の合計を総得点と呼ぶ。 ひっくり返し操作を1回行うと、その前後で総得点は2点以上増加する。

  • 例 的中数字をカッコで示すと、ゲーム

3,1,4,5,2 → 4,1,(3),5,2 → 5,3,1,(4),2 → 2,4,1,3,(5) → 4,(2),1,3,(5) → 3,1,2,(4),(5) → 2,1,(3),(4),(5) → (1),(2),(3),(4),(5) において、 総得点は、開始時の0点から、4点増加、4点増加、8点増加、2点増加、6点増加、4点増加、3点増加で、終了時31点になっている。

出典[編集]

  1. ^ Morales, L.; Sudborough, H.; A quadratic lower bound for Topswops, Theoretical Computer Science 411(44–46), 3965–3970 (2010).
  2. ^ ナノピコ教室「ひっくり返しシャフル」共立出版「bit」1980年7月号133-135.