イェータ (海防戦艦)

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改装前の「イェータ」[1]

イェータ (Göta) はスウェーデン海軍海防戦艦スヴェア級。艦名はイェート人に由来する[2]

イェーテボリのリンドホルメン造船所で建造[3]。1888年起工[3]。1889年9月30日進水[3]艤装はカールスクルーナ海軍工廠で行われ、1891年7月1日に就役した[2]

基準排水量3097トン、満載排水量3393トン、全長82.0m、最大幅14.8m、計画吃水4.92m[3]。司令部要員用施設を有した[4]

主砲はアームストロング34口径25.4cmM/89A型後装施条砲2門で、連装砲塔に搭載した[5]。これは、「スヴェア」搭載のものより発射速度が上がっている[4]。副砲はボフォース34口径5.2cmM/89型砲を4門搭載[4]。他に、マキシム・ノルデンフェルト48口径57mmM/89型砲5門、パルムクランツ25mmM/77型機銃6挺を搭載した[4]。2隻の艦載艇は25mmM/77型機銃1挺を搭載した[6]。水雷兵装は艦首に38.1cmM/89型水中魚雷発射管1門と艦中央部の両側に38.1cm水上魚雷発射管を各1門搭載した[5]

1900年以降スヴェア級3隻は順次近代化改装を受け、44口径21cm砲1門、44口径15.2cm砲7門、57mm砲11門となった[7]。他、水上魚雷発射管は撤去され、艦載艇の機銃がヴィッカース・マキシム39口径37mmM/98B型砲に換えられた[8]

主機は水平2気筒2段膨張式蒸気往復動機関2基、主缶は円缶6基で、出力4600指示馬力[3]。2軸推進で計画速力16ノット[3]。公試では16.0ノットを発揮した[3]。航続距離は10ノットで2400浬[3]

装甲鈑はフランスのシュネデール社製[4]。厚さは水線装甲帯が最大293mm、甲板25mm、シタデル268mm、司令塔268mm、主砲前楯293mm[4]。近代化改装後の砲塔は前楯190mm、側楯140mm[9]

ロスラーゲンス飛行戦隊、宿泊艦となっている「イェータ」が写る

「イェータ」は1891年から1896年まで沿岸艦隊旗艦を務めた[10]。1895年、「イェータ」は「トゥーレ」、砲艦「エッダ」とともにキール運河の開通式に参加した[2]。1897年、イギリスのヴィクトリア女王在位60周年記念観艦式に参加[2]。1927年にロスラーゲンス飛行戦隊の宿泊艦となり、1938年に除籍され、1942年から1943年にかけて解体された[11]

脚注[編集]

  1. ^ 『海防戦艦』109ページ
  2. ^ a b c d 『海防戦艦』110ページ
  3. ^ a b c d e f g h 『海防戦艦』113ページ
  4. ^ a b c d e f 『海防戦艦』108ページ
  5. ^ a b 『海防戦艦』108、113ページ
  6. ^ 『海防戦艦』108-109ページ、同書の記述では外装水雷搭載の有無についてははっきりしない。
  7. ^ 『海防戦艦』111-112ページ、Conway's All the World's Fighting Ships 1860-1905, p. 361
  8. ^ 『海防戦艦』112ページ
  9. ^ 『海防戦艦』111ページ
  10. ^ "The Swedish Armoured Coastal Defence Ships", p. 12
  11. ^ 『海防戦艦』112-113ページ

参考文献[編集]

  • 橋本若路『海防戦艦 設計・建造・運用 1872~1938』イカロス出版、2022年、ISBN 978-4-8022-1172-7
  • Conway's All the World's Fighting Ships 1860-1905, Conway Maritime Press. 1979, ISBN 0-8317-0302-4
  • Daniel G Harris, "The Swedish Armoured Coastal Defence Ships", Warship 1996, Conway Maritime Press, 1996, ISBN 0-85177-685-X, pp. 9-24