ソッド語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ソッド語
ክስታንኛ[1] (kəstanəɲɲa)[2]
話される国 エチオピアの旗 エチオピア
地域 中部
民族 グラゲ人
話者数 25万5千人 (1994年)[3]
言語系統
表記体系 エチオピア文字[3]
言語コード
ISO 639-3 gru
テンプレートを表示

ソッド語(ソッドご、: Soddo)とはエチオピアで話されているグラゲ諸語英語版に属する言語の一つである。〈キリスト教徒〉を意味する話者の自称ክስታኔ(kəstane)にちなみクスタネ語(クスタネご、: Kistane)とも称される。近い系統にある言語としてはチャハ語英語版が挙げられる。

音韻論[編集]

母音[編集]

前舌 中舌 後舌
  円唇
/i/ /u/
高め ə
/e/ /o/
低め ä
/a/

このうちäには異音[å]が、əには異音[ŭ]が存在する[4]

子音[編集]

唇音 歯音 前部口蓋音 軟口蓋音 喉頭音
閉鎖音など Simple /b/ /d/, /t/ /ɡ/, /k/ /h/
声門音化 /tʼ/ /kʼ/
唇音化 /ɡʷ/, /kʷ/
唇音・声門音化 /kʷʼ/
摩擦音 /f/
歯擦音 /z/, /s/ /ʑ/, /ɕ/[5]
破擦音 Simple /d͡ʑ/, /t͡ɕ/[6]
声門音化 /t͡ɕʼ/[7]
鼻音 /m/ /n/ /ɲ/
流音 /l/, /r/
半母音 /w/ /j/

なお/ʔ//kʼ/の変種として現れる場合もある[4]

形態論[編集]

代名詞[編集]

人称代名詞には一人称を除き男性と女性の区別が存在する。これは動詞の活用についても当てはまる。

ソッド語の人称代名詞
単数 複数
一人称 (ädi) እኝ əɲɲa
二人称 男性 (dähä) ደህም dähəm
女性 ደሽ däʃ ደህማ dähma
三人称 男性 kʷa ክነም kənnäm
女性 ኪያ kya ክነማ kənnäma

なお、このうち一人称複数のəɲɲaはソッド語話者についてのみ用いられる[2]

名詞[編集]

複数形は接尾辞を付加してつくる。また英語theに相当する限定の要素も接尾辞-iにより表す。 以下、/bajj/ 〈子供〉を例に挙げる。

単数 複数
非限定 限定 非限定 限定
ባይ /bajj/ ባዪ /bajji/ ባዮች /bajjot͡ɕt͡ɕ/ ባዮቺ /bajjot͡ɕt͡ɕi/
直訳 子供 その子供 子供ら その子供ら

動詞[編集]

動詞には完了と不完了の区別が存在する。

統語論[編集]

語順[編集]

SOV型である[2]

脚注[編集]

  1. ^ Girma A. Demeke, የአማርኛ ምድብ ተውላጠ ስሞች ታሪካዊ ቅኝት.
  2. ^ a b c 柘植(1989)。
  3. ^ a b Lewis et al. (2015).
  4. ^ a b Leslau (1968:6).
  5. ^ Leslau (1968)ではそれぞれž, šと、柘植(1989)ではそれぞれʒ, ʃと記載。ここでは前者の指定に忠実な記号を示した。
  6. ^ Leslau (1968)ではそれぞれǧ, čと、柘植(1989)ではそれぞれ, と記載。ここでは前者の指定に忠実な記号を示した。
  7. ^ Leslau (1968)ではč̣、柘植(1989)ではtʃʼと記載。ここでは前者の指定に忠実な記号を示した。

参考文献[編集]

  • Leslau, Wolf (1968). Ethiopians Speak: Studies in Cultural Background III. Soddo. Berkeley & Los Angeles 
  • Lewis, M. Paul; Simons, Gary F.; Fennig, Charles D., eds. (2015). Ethnologue: Languages of the World (18th ed.). Dallas, Texas: SIL International.
  • 「ソッド語」 亀井孝河野六郎千野栄一 編、柘植洋一 他共著 『言語学大辞典』第2巻、三省堂、1989年。ISBN 4-385-15216-0

外部リンク[編集]