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ノート:精神障害の診断と統計の手引き/診断規準

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診断規準について[編集]

アメリカ精神医学会(APA)が発行する、「精神障害の診断と統計の手引き」(略称:DSM)は、精神疾患を分類して番号を付与し、それぞれの疾患(障害)について、文章による「診断規準」を定めている。これらは、例えば、Pedophilia(小児性愛)についてだと、次のような規準がある(DSM-IV-TR)。

Axis I: Clinical Syndromes
Diagnostic criteria for 302.2 Pedophilia
  • Repeatedly for at least 6 months, the patient has intense sexual desires, fantasies or behaviors concerning sexual activity with a sexually immature child (usually age 13 or under).
  • This causes clinically important distress or impairs work, social or personal functioning.
  • The patient is 16 or older and at least 5 years older than the child.
Note: Do not include an individual in late adolescence involved in an ongoing sexual relationship with a 12- or 13-year-old.
( Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition, Text Revision. Copyright 2000 American Psychiatric Association )

これらの記述あるいは診断規準は、精神障害を資格を持った専門家(精神科医)が診断するための手引き(マニュアル)の一端として作成されているものである。精神障害の診断は、多面的(多軸的)に行われる必要があり、以上のような障害についての規準記述のみで行われるのではないのは云うまでもない(上述の「診断規準」は、第一軸「臨床症例」での規準である)。

また、これらの記述は、必要最低限の条件を提示してはいるが、このような記述条件が、診断において「十分な記述」であるという根拠はない。あくまで専門家が診断するための補助的な道具としての役割を持っている。また、診断規準に関しても、記述がこれで十分かという問題以外に、別の記述に変えるべきだとの意見もあり、必ずしも、以上のような記述が完成した「診断規準」として存在する訳でもない。

従って、診断規準については、基本的に、非専門家である一般人が診断を行う目的で使用してはならないものであり、また、診断を行うのは、最終的には、資格を持った医師であるということも強調せねばならない。

引用での問題[編集]

しかし、その他方で、精神障害に関する何らかの説明を行うとき、DSM の診断規準を引用することは、ある意味で、もっとも誠実で正確な精神障害に関する説明の一部を不可欠に構成する。診断規準の記述を前提にしない場合、精神障害について何かの説明を行うとき、一般人が恣意的に、根拠無く説明を行っているとの批判を免れない。また精神科医等が説明を記す場合においても、少なくとも、診断を DSM に依拠する限り、診断規準の記述を無視することは不適切である。

何らかの必要において、精神障害についての説明を行う場合、最終的に、もっとも現時点で客観的な方法としては、「診断規準」の引用が存在する。診断規準本文を引用せず、規準の記述を元に、一般人が自己流の解説を行うことは、「診断規準本文」の引用と提示以上に問題があるというべきである。

本来、「引用」とは常に、原文での文脈から切り取られたものであり、引用の意味を十分に理解するには、原文コンテクストへの参照が必須であることは云うまでもない(そして、この場合、「原文コンテクストへの参照」とは、DSM の「診断規準」とは、どのような位置を持つものか、何を目的として作成されているのかという、上記に簡単に説明したような背景の情報の理解を含む)。DSM の診断規準においても、同様なことが成立する。

ICD での診断規準[編集]

国際連合世界保健機構(WHO)が定めている「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」(略称:ICD)においても、同様に「診断規準」が存在するが、この場合の診断規準についても、上述の DSM-IV-TR において述べたと同様の問題が存在する。診断規準の「引用」に関しても、同じ注意が必要である。