バトニ

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バトニグルジア語: ბატონიグルジア語ラテン翻字: batoni)は、ジョージア語で「領主」や「主人」を意味する用語である[1]。同じような意味を持つ古い用語「パトロニ」(グルジア語: პატრონიグルジア語ラテン翻字: patroni)から派生し、15世紀ごろから一般的に使われるようになった。

中世ジョージアの封建階層において、「バトニ」は最高位の宗主(すなわち君主)や領主、あるいはクマ農奴奴隷)を所有する平民や聖職者を意味する。「バトニ」は王族や貴族の称号の一部として登場することもある。例えばムフラニグルジア語版を領地としたムフラニ家英語版の当主の称号はムフラン=バトニ(グルジア語: მუხრან-ბატონიグルジア語ラテン翻字: Mukhran-batoni)であった。カヘティ王国初期の王についても、いくつかの文献において「バトニ」の称号で言及されている[2][3][4]

現代においては、「バトニ」は男性に対して用いられる敬称であり、英語圏での「ミスター」や「サー」に相当する。女性に対する同等の敬称は「カルバトニ」(グルジア語: ქალბატონიグルジア語ラテン翻字: kalbatoni)である。フルネームに対しても、に対してもに対しても使用することができる。特定の人に直接呼びかける場合は、呼格で「バトノ」(グルジア語: ბატონოグルジア語ラテン翻字: batono)あるいは「カルバトノ」(グルジア語: ქალბატონოグルジア語ラテン翻字: kalbatono)として使われ、通常は一般的にの前、あるいは姓の前に置かれる。例えばテイムラズさんに呼び掛ける場合は、「バトノ・テイムラズ」(グルジア語: ბატონო თეიმურაზグルジア語ラテン翻字: Batono Teimuraz)となる[5]。直接呼びかける場合は、単独で使用することもできる[6]。電話に出る時など、相手方が誰か分からない場合に「バトノ」と話しかけることもある。

参考文献[編集]

  1. ^ Mikaberidze, Alexander (2007), Jon Woronoff, ed., Historical Dictionaries of Georgia, Plymouth: The Scarecrow Press, ISBN 978-0-8108-5580-9, https://archive.org/details/historicaldictio00mika/page/695 
  2. ^ Toumanoff, Cyril (1949–51), “The Fifteenth-Century Bagratids and the Institution of Collegial Sovereignty in Georgia.”, Traditio 7: 216 
  3. ^ Jones, Stephen F. (2005), Socialism in Georgian Colors: The European Road to Social Democracy, 1883-1917, Harvard University Press, p. 195, ISBN 0-674-01902-4 
  4. ^ Suny, Ronald Grigor (1994), The Making of the Georgian Nation, Indiana University Press, pp. 42–3, ISBN 0-253-20915-3 
  5. ^ თსუ მედიცინის ფაკულტეტი საიუბილეო თარიღს ულოცავს უროლოგიის კათედრის გამგეს, გამორჩეულ დასტაქარს და მკვლევარს, პროფესორ თეიმურაზ ჩიგოგიძეს., ივანე ჯავახიშვილის სახელობის თბილისის სახელმწიფო უნივერსიტეტი, (2021-07-21), https://www.tsu.ge/ka/faculty/%E1%83%9B%E1%83%94%E1%83%93%E1%83%98%E1%83%AA%E1%83%98%E1%83%9C%E1%83%98%E1%83%A1%20%E1%83%A4%E1%83%90%E1%83%99%E1%83%A3%E1%83%9A%E1%83%A2%E1%83%94%E1%83%A2%E1%83%98/news/%E1%83%97%E1%83%A1%E1%83%A3-%E1%83%9B%E1%83%94%E1%83%93%E1%83%98%E1%83%AA%E1%83%98%E1%83%9C%E1%83%98%E1%83%A1-%E1%83%A4%E1%83%90%E1%83%99%E1%83%A3%E1%83%9A%E1%83%A2%E1%83%94%E1%83%A2%E1%83%98-%E1%83%A1%E1%83%90%E1%83%98%E1%83%A3%E1%83%91%E1%83%98%E1%83%9A%E1%83%94%E1%83%9D-%E1%83%97%E1%83%90%E1%83%A0%E1%83%98%E1%83%A6%E1%83%A1-%E1%83%A3%E1%83%9A%E1%83%9D%E1%83%AA%E1%83%90%E1%83%95%E1%83%A1-%E1%83%A3%E1%83%A0%E1%83%9D%E1%83%9A%E1%83%9D%E1%83%92%E1%83%98%E1%83%98%E1%83%A1-%E1%83%99%E1%83%90%E1%83%97%E1%83%94%E1%83%93%E1%83%A0%E1%83%98%E1%83%A1-%E1%83%92%E1%83%90%E1%83%9B%E1%83%92%E1%83%94%E1%83%A1,-%E1%83%92%E1%83%90%E1%83%9B%E1%83%9D%E1%83%A0%E1%83%A9%E1%83%94%E1%83%A3%E1%83%9A-%E1%83%93%E1%83%90%E1%83%A1%E1%83%A2%E1%83%90%E1%83%A5%E1%83%90%E1%83%A0%E1%83%A1-%E1%83%93%E1%83%90-%E1%83%9B%E1%83%99%E1%83%95%E1%83%9A%E1%83%94%E1%83%95%E1%83%90%E1%83%A0%E1%83%A1,-%E1%83%9E%E1%83%A0%E1%83%9D%E1%83%A4%E1%83%94%E1%83%A1%E1%83%9D%E1%83%A0-%E1%83%97%E1%83%94%E1%83%98%E1%83%9B%E1%83%A3%E1%83%A0%E1%83%90%E1%83%96-%E1%83%A9%E1%83%98%E1%83%92%E1%83%9D%E1%83%92%E1%83%98%E1%83%AB%E1%83%94%E1%83%A1. 2023年8月23日閲覧。 
  6. ^ Braun, Friederike (1998), Terms of address: problems of patterns and usage in various languages and cultures, Walter de Gruyter, pp. 106–113, ISBN 0-89925-432-2 

外部リンク[編集]