大野和三郎

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大野 和三郎(おおの わさぶろう、1955年昭和30年〉11月30日[1] - )は、日本政治家滋賀県議会議員(4期)、元滋賀県犬上郡豊郷町(2期)。

来歴[編集]

滋賀県豊郷町の畜産農家に生まれる[2]。父の善作は豊郷町議会議員を務めた[2]。中学卒業後に大野は県外の精肉店で働く[2]。後に、帰郷し、家業を手伝う[2]。帰郷後、父が死去し、1981年25歳で豊郷町議会議員選挙に立候補し、初当選[2]。町議をを5期務め、議長も務めた[1]1999年豊郷町長選挙に立候補し、現職らを破って当選[3]。豊郷町長時代に町内にある豊郷町立豊郷小学校新築問題(後述)では老朽化と耐震性を理由に旧校舎解体の方針を取った。しかし、町民から戦前に建てられた旧校舎の保存を求める運動が起きた。それにもかかわらず、大野は解体を強行。旧校舎の保存を求める団体は、解体中止を裁判所に訴えた。また、大野に対するリコールが起こり、2003年にリコールが成立。成立後の出直し選挙で再選[4]。旧校舎の解体に関しては住民との和解が成立し、旧校舎の保存が決まった。町長時代は滋賀県町村会長を務めた[2]

大野は2007年の統一地方選挙では町長選に出馬せず、県議会議員選挙に無所属で出馬したが落選[5]。2011年の統一地方選挙で県議会議員に当選[6]。2015年に再選[7]。2019年に三選[8]。2023年に4回目の当選を果たし[9]、現在に至る(会派は無所属→自民党)。

豊郷小学校校舎保存問題[編集]

町長に就任した大野は、2000年に町立日栄小学校の改築に着手したことに続き、町立豊郷小学校についても施設の老朽化と耐震性を理由として校舎と講堂を解体するとともに、新校舎をする方針を打ち出した。これに町議会も賛成多数で承認した。一方、一部の町民からは1937年完成、豊郷町出身の実業家の古川鉄治郎の寄付で当時、滋賀県在住のアメリカ人建築家ヴォーリズの設計による、当時としては珍しい鉄筋コンクリート造の壮麗な校舎で、暖房設備など当時最先端の技術が積極的に使用され、「白亜の殿堂」「東洋一の小学校」と呼ばれた豊郷小学校の校舎を取り壊すことに反対する意見が出された。町民を対象にしたアンケートでは解体反対が賛成を大きく上回った。2001年10月に「豊郷町の歴史と未来を考える会」が設立され、同会は大津地方裁判所に講堂の解体工事の差し止めを求める仮処分申請を行い、2002年1月に大津地裁は差し止めを認めた。町は地裁の判断を一旦不服として大阪高等裁判所に抗告したものの、講堂を保存する方向に方針転換。しかし、校舎に関しては解体の方針を変更しなかった。

2002年8月、考える会は大津地裁に校舎解体差し止めを求める仮処分を申請し、12月19日に承認されたが、町長の大野は地裁の判断や町民の意向を無視し、20日に解体工事を強行した。工事中、作業員が解体中止を求めて現場に押し掛けた女性を床に倒すなどして、暴行を加えたことがニュースで放送された[10]。これを受けて一部の町民は工事の差し止めを求めて校舎に立てこもり、大野も工事中止を発表した。このような中、大野は24日に方針を転換し、新校舎を建設する一方で、旧校舎を保存すると決定した。

この後、2003年3月、大野に対する解職請求(リコール)が起こり、投票の結果リコールが成立し、大野は町長を一旦失職をした。大野は同年4月に統一地方選挙の一環として行われた出直し町長選挙に立候補した。解体反対派は元町長ら複数の候補者を擁立したことによる分裂もあって、大野は次点と55票差で町長に返り咲いた[4]。選挙前の3月には住民によって新校舎建設の差し止めが請求されたが、6月に着工した豊郷小の新校舎は翌2004年3月に完成した。

「豊郷町の歴史と未来を考える会」側は大野に対する損害賠償請求や校舎建設費の支出差し止め請求と賠償請求の3件の訴訟を起こし、損害賠償請求および支出差し止め請求については、町長への賠償が認められ、支出差し止めを命じる判決が最高裁で確定した。2007年12月には校舎建設費の賠償について、建設業者などが校舎保存のための寄付を行うことを条件に和解が成立し、校舎改築問題に関する一連の訴訟は全て終了した。

2008年10月より、約5億5300万円をかけて旧校舎の耐震・改修工事が開始された。その一方、考える会側も、設計事務所に旧校舎の耐震診断を依頼し、3階の一部への軽微な補強(約500万円)以外の工事は不必要との解析結果が得られたとし、また不必要な工事によって旧校舎の文化財的価値が毀損されたとして、2009年3月に設計事務所と大野の後任の豊郷町長の伊藤定勉に対して、設計監理業務の委託費約3000万円の返還を求める訴訟を起こした。旧校舎は耐震工事完了後の同年5月30日、町立図書館などが入居する『豊郷小学校旧校舎群』として開館した。

脚注[編集]

参考文献[編集]

関連項目[編集]