影響汎関数

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影響汎関数(えいきょうはんかんすう、: the Influence Functional)とは、波動関数の時間発展を記述するプロパゲーター環境効果を含めたもの。ノーベル賞物理学者のリチャード・P・ファインマンと、その学生であったバーノンが、外部環境(熱浴:reservoir)に曝された対象系を量子力学的に記述する為に考え出した(1963年頃)。ファインマン-バーノンの影響汎関数(the Feynman-Vernon's Influence Functional)。

概要[編集]

まず、対象系と熱浴をまとめて一つの閉鎖量子系だと見なし、そのまま量子力学的に取り扱う。全系の確率密度関数に対するプロパゲーター経路積分形式で求め、そののち熱浴の自由度で積分(縮約)すると我々の興味のある自由度、つまり対象系のみに関する実質的(effective)なプロパゲーターが求まる。その環境効果を取り入れたプロパゲーターを影響汎関数と呼び、それを用いた手法を影響汎関数法と呼ぶ。

ここで用いた対象系と熱浴をまとめて量子化する手法は「系+熱浴アプローチ」などと呼ばれ、当時、開放系を量子力学で扱う為に認められた数少ない手法であった。

参考文献[編集]

  • R.P.Feynman and F.L.Vernon Jr. Ann.Phys.24 118-173 (1963)
  • 谷村吉隆 『臨時別冊・数理科学 化学物理入門 -経路積分法と非平衡統計力学-』 サイエンス社(2002)
  • ファインマン-ヒッブス著 北原和夫訳 『量子力学と経路積分』 みすず書房(1995)

関連項目[編集]