閃光粉

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様々な閃光粉

閃光粉(せんこうふん)は暗い場所で写真を撮影する時に燃やして使用された粉である。

前史[編集]

暗い場所でも写真を撮影したいという欲求は古くからあり、高速レンズや感度向上の努力とともに人工光源の試みもさかんに行われていた[1]。その成果の一つが1880年頃から使用されるようになったマグネシウムリボン発光器である[1]。これは反射傘のついた器具に時計のゼンマイのようなマグネシウムリボンをセットし、先端を引き出して点火すると電気花火のように明るい光を発するものであった[1]

発明[編集]

これをさらに改良し、粉末にしたマグネシウムに塩化カリウム[2]硝酸カリウム[2]を助燃剤[1]として混合し、発光器の上に少量盛り、発火石等で点火する[1]閃光粉が発明された。

使用する分量により光量を調整でき[1]、狭い部屋でも広い部屋でも柔らかい光が充分に回り[1]、経済的で便利であったため普及した[1]。大きな音が出ることから「ボン炊き」と俗称された[2]

しかしマグネシウムが火の粉として飛び散り灰が降る[2]ため「室内にあった紙に火がつきボヤ騒ぎになった[3]」「用意されていた料理をダメにしてしまった[3]」等の逸話も多い。また爆発的に燃焼するため、写真フィルムが燃えやすいセルロイドベースであったこととあいまって、写真館火災保険料が高く設定される原因にもなった。

熟練を要すること、危険であること、閃光電球が確実に発光するようになったことから使用されなくなった[2]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h 『クラシックカメラ専科No.2、名機105の使い方』p.77。
  2. ^ a b c d e 『クラシックカメラ専科』p.193。
  3. ^ a b 『ニコンの使い方』p.186。

参考文献[編集]

  • 『クラシックカメラ専科』朝日ソノラマ全国書誌番号:00111354
  • 『クラシックカメラ専科No.2、名機105の使い方』朝日ソノラマ、1980年。
  • 日本カメラ社『ニコンの使い方』〈日本カメラMOOK〉。ISBN 4-8179-4014-XNCID BA91252983